« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

2010年6月

Minutecast 特別番組と英・ガーディアン紙

2010/06/14(月)

本日のFootball Japan Minutecastは特別番組として、今夜11時にキックオフする日本×カメルーン戦をプレビューします。

 

World Cup Special - Japan vs. Cameroon preview

(iTunes購読

 

また、英国・ガーディアン紙に賀川浩氏の言葉なども含む、日本代表の課題を紹介する記事を載せて頂きました。同紙のホームページでもご覧頂けます。

 

http://www.guardian.co.uk/football/2010/jun/13/world-cup-fans-network-japan

 

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


【キックオフまで後1日】 FOOTBALL JAPANメンバーのW杯予想 (下:全体)

2010/06/10(木)

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会はいよいよ明日、11日の夜に開幕戦を迎えます。

Football Japan Minutecastにて、W杯期間中は日本戦のプレビュー・レポートをはじめ、決勝トーナメントからは現地ヨハネスブルグから特別番組なども、週数回配信する予定ですので、お楽しみにして下さい。

 

しかし、その前に、W杯に向けてFootball Japanメンバーの予想はどうでしょうか?私はシックス本多克己社長と、日本の現役最年長のスポーツライター・賀川浩氏と、ライター兼賀川氏のアシスタント・根本いづみ氏と4人でお話しました。

 

(「上:日本代表」はこちら)

 

 

 さて、話題を日本代表から全体に変わりましょう。2010年のW杯はどこが優勝すると思いますか?

 

賀川: スペインは評判が良いようですが、スペインが今までW杯で良いのを見たことがないですからね!今のスペインは確かに力ありますから、前も揃っているし、後ろもジェラール・ピケも皆も良くてしっかりしているから、決して優勝しても不思議ではない。それにスペインみたいなチームに対して一番嫌な感じで抵抗できる、イタリアはここのところちょっと落ちているから、この際勝って欲しいです。ブラジルもやはりスペインと並んで優勝候補に挙げるのは当然でしょう。イングランドも一遍勝って、決勝までは出て欲しいと思いますけど!

 

本多: イングランド。出場した英語圏での開催ではすべて優勝しているからです。

 

根本: スペイン。堅固なディフェンスに、充実の中盤、そして強力な2トップ。死角がないですね。

 

メイブリー: イングランド!いや、冗談です。イングランドと日本が無理だったら、やはり美しいサッカーを見せてくれるスペインに優勝して欲しいですが、グループリーグを突破した後は難しい相手ばかりです。もう少し実際的なアプローチをする、ドゥンガ監督がブラジルに優勝をもたらすのではないかと思います。

 

 他に注目したいチームはどこですか?

 

賀川: ポルトガルがね、前は何と言ってもクリスチアーノ・ロナウドですし、マンチェスター・ユナイテッドナニも良い選手ですから、彼らがどれぐらい働くかで、まるで違ってきます。ポルトガルは前のルイス・フィーゴの時代でも、いつも世界からいじめられているような感じでやって、すぐ拗ねちゃうから、それさえなければ、サッカーとしては一人ひとりの芯が強いプレーが出てくると、面白いんだろうと思います。

 

本多: 韓国は隣国として応援したいです。そして、スペイン、欧州王者があの美しいサッカーでどこまでいけるかですね。後は、アメリカも良いグループに入ったし、昨年のコンフェデレーションズカップでも結果を残したので、かなり良い線いきそうです。

 

根本: デンマーク、それからやっぱりブラジルは気になりますね。デンマークは、全体的に顔が好みなんです。平均点の高さというのか、イチオシはスウェーデンなのですが、残念ながら今回は出てこないので……次点のデンマークに期待しています。

 

メイブリー: アルゼンチンと例のディエゴ・マラドーナ監督。6月の終わりぐらいにブチっとキレて、カルロス・ビラルドの戦術アドバイスを無視して、準々決勝にフォワードを(マルティン・パレルモまで含めて)6人とも同時に起用することを期待しています。後は、オランダ、デンマーク、それから北朝鮮。欧州人として、日本や韓国の人々は「千里馬」の活躍をどんな目で見るかが注目です。

 

 得点王は?

 

賀川: イングランドが上がってくるためには、やっぱりルーニーがやらなあかんでしょう。クリスチアーノ・ロナウドも暴れてくれれば、ポルトガルは面白いです。それから、上まで来なくても、ディディエ・ドログバ。どこかを相手に1試合で4点取ったら一気に得点王になることもありますからね。

 

本多: ウェイン・ルーニー、またはロビン・ファンペルシー

 

根本: ダビド・ビジャ、またはルイス・ファビアーノ

 

メイブリー: ビジャがグループリーグでかなり点を取れると思いますし、それだけでも十分かもしれません。

 

 他に注目したい選手もいますか?

 

賀川: サッカーとしては、世界中の評論家は皆スペインに行くでしょうけれども、アフリカンパワーの個人的な強さがどこかで発揮できるチームが出てくれば面白いです。そういう意味でやっぱりドログバですね。サミュエル・エトオはちょっとまとまり過ぎていると思います。後は、韓国は日本とやるときぐらいはいつも一生懸命になるんですけど、どことやってもあのつもりでやってくれれば良いのにですね。

 

本多: 本田圭佑大久保嘉人森本貴幸。日本が躍進できるとすれば、この3人の活躍しかありません。大久保は挑発に乗ってカードをもらわないこと!

 

根本: 森本、楢崎正剛川島永嗣。日本の躍進には、彼らの活躍が絶対必要だと思います。後は、ファン・セバスチャン・ベロン。今大会で最もセクシーなフットボーラーです。個人的に、ですが(笑)。

 

メイブリー: 本田は日本のキーマンとして、ここ2年の急成長をW杯の舞台でも続けられるようにチャンスと自由を十分与えて欲しいです。また、北朝鮮に戻りますが、やはり鄭大世。「死の組」にもかかわらず、本人はJリーグで見せる得点力をW杯でも発揮し、1試合ごとに必ず1ゴールを決めると言っているそうです。

 

 どのチーム、或いは選手が期待外れに終わるでしょうか?

 

賀川: まず、南アフリカは皆、地元のチームを押し上げるから、期待外れにはならないと思います。しかし、記者はリオネル・メッシがいるからアルゼンチンを高く買いたいわけで、僕もアルゼンチンのサッカーが好きですけれども、バルセロナは良いチーム過ぎるから、メッシのボールを受ける感覚が非常に贅沢になりますよね。アルゼンチンの周りは、ちょっと荒削りの仲間とやるときに、どんな具合になるかなと思います。もちろん、世界一の選手ですから、上に上がってきたら面白いと思いますけど、監督さんはあのマラドーナ監督さんですよね。大天才が監督で、大天才がチームの中心というのは、非常に難しいところがありますが、色んな意味で面白いですね。

 

本多: クリスチアーノ・ロナウド。

 

メイブリー: 賀川さんの仰る通り、メッシやロナウド、ルーニーといった選手はいずれもあまりに素晴らしいクラブでプレーしていますが、それぞれの代表チームでは多少苦労してもおかしくないですね。チームとしては、開催地の南アフリカは何とかなると思いますが、同じグループAのフランスには何も期待できません。

 

 最後に、2010年の南アフリカ大会に向けて、一番お楽しみにしていることを教えて下さい。

 

賀川: サッカーそのものは、どんどん進歩したり、個人的にも運動量も増えて、ものすごく忙しいサッカーになりました。それで面白くないという人も多いけれども、このような中から今のバルセロナみたいなチームという一つの形ができました。それに習うように、それぞれの個性を持った選手のある国々がやはり、運動量を増やして、従来よりもサッカーをもっと面白くしようという感じで上がってきたというのは確かです。

そういう意味ではね、アフリカというのは、今の学説では人類の発祥の地、そしていわゆる二足歩行を始めた土地ですね。それで二足歩行じゃないとできないサッカーなんですよね。そのサッカーが初めて、アフリカという土地でやるというところに、僕はサッカーの歴史の上でものすごく大きい時期が来ていると思います。それでやっぱり、サッカーがもう一段上になってきたというのは、次どんなふうにこの大会で見せるか、国別という形でどれだけ新しい組織プレーを表せるか。従来よりも一歩進んだもんになって欲しいなと思います。その中に、発祥の地であったアフリカ人に割り込んできて欲しいです。

 

本多: 上記の本田、大久保、森本の活躍。

 

根本: まずは、大会の成功です。それからマラドーナ監督の言動と、ブラジル・スタンドの美女も楽しみ…(笑)

 

メイブリー: 個人的には、今年はライターとして2度目のW杯ですが、現地で取材するのは初めてです。賀川さんのように、いつもとは違う国や地域でW杯などを開催する(もちろん、再来年のユーロもポーランドとウクライナ、2014年W杯もブラジルで行われる)のはすごく価値のあることだと思います。ですから、南アフリカ風にサッカーの大祭りを体験するのを本当に楽しみにしています。いつも治安など、アフリカのことを悪く言う人がようやく黙ってくれるように、大会の成功を祈っています。

 

 

(「上:日本代表」はこちら)

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


【キックオフまで後2日】 FOOTBALL JAPANメンバーのW杯予想 (上:日本代表)

2010/06/09(水)

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会は今週の金曜日、11日に開幕戦を迎えます。

Football Japan Minutecastにて、W杯期間中は日本戦のプレビュー・レポートをはじめ、決勝トーナメントからは現地ヨハネスブルグから特別番組なども、週数回配信する予定ですので、お楽しみにして下さい。

 

しかし、その前に、W杯に向けてFootball Japanメンバーの予想はどうでしょうか?私は日本の現役最年長のスポーツライター・賀川浩氏と、シック本多克己社長、ライター兼賀川氏のアシスタント・根本いづみ氏と4人でお話しました。

 

(「下:全体」はこちら)

 

 

 日本代表の初戦、カメルーン戦はいよいよ14日(日)に行われます。岡田ジャパンの調子はどうでしょうか?

 

賀川: ああ、ずっと悪いですよね。一番の心配は、去年の予選を突破してから、全然伸びていないこと。そして、伸びていないだけでなくて、むしろ、前と前のシーズンの疲れが重なって、遠藤保仁が調子が悪い。それから中村俊輔も、日本の食品で言えば賞味期限切れという感じに近づいている。元々はそういう年齢でもあるし、そういう体力でもあるけれども、それが今、非常に目立っていますよね。すごい怪我が来ているから。最もパスのうまい2人が揃ってダメというのはね、大変ですよね。

 

本多: 好調とは言えないかもしれないけども、ぼちぼちですね。

 

根本: 俊輔の調子が心配ですね。中澤佑二は、セルビア戦に比べるとずいぶん良くなってきた感じで一安心ですが。

 

メイブリー: アジア予選で出場権を獲得したのは1年前になりますが、それ以来は、2部から昇格を決めたら「攻撃的なスタイルは変わらない」と主張するクラブチームに似ています。やはり、トップレベルはそう甘くないですね。岡田監督はようやく戦術を変更し始めていますが、それでも、戦術が分からないマスコミは何故か変えないようにプレッシャーをかけているようです。

 

 カメルーン戦に続き、グループEでオランダデンマークとも対戦します。突破の鍵となるのは何でしょうか?

 

賀川: カメルーン戦ではまず最低、勝つことが条件ですけれども、そうでなければ負けないことです。それは一番ですね。そのためには、カメルーンとアフリカのチームは平均して、非常に皆が個人的に優れているけれども、守りのときに時々どの優秀なチームでも気が抜けるときがありますからね。そういうところにこちらの連動性がうまく行き合えばね…

イングランド戦の前半の得点でも、日本は本当に良いリズムでコーナーキックを得ましたね。そして、遠藤が非常に賢いプレーで引っ張って入れたけれども、キックの前に阿部勇樹がニアへ走ったので、田中マルクス闘莉王が付いていきました。闘莉王は非常に攻撃のセンスがありますから、シュートの前の動きも非常にうまいですね。それで入りました。

日本はコーナーキックも含めて、あの一連、ものすごくリズミカルに行っていますよね。ちょうどそのときに、イングランドがちょっとぼんぼんやりしていたのですね。サッカーの試合にそういうことがあるので、もしカメルーンのときにも出れば、うまくいけば2対1、1対0で勝てるかも分かりません。悪くても引き分けてくれれば、次に臨みがありますよね。

 

本多: カメルーン戦は重要ですが、その結果にとらわれずに自信を持って試合に臨むことです。負けても過度に落ち込む必要はありません。

 

根本: 私も同感ですね。初戦はもちろん大事。でも、万一、落としたとしても2006のときのように「もうダメだ」と思わないこと(メディアも含めて)。後は、GKの活躍。

 

メイブリー: 相手の3チームはいずれも体の強い選手がたくさん揃っていることから、日本にとっては決して理想的な組み合わせではありませんが、私は最初から、中盤の争いが鍵を握ると思っています。ですから、岡田監督は自信を持って、レベルの高い相手に対してはボールをキープできない4-2-3-1をやめ、阿部(または稲本潤一)を投入して4-1-2-2-1を起用しなければならないと思います。後は、本田圭佑をどう活かせば良いか、ということですね。

 

 岡田監督はもちろん、「ベスト4」という目標を掲げていますが、これは本当に現実的ですか?NOの場合は、現実的な目標は何でしょうか?

 

賀川: 普通に考えれば、日本より強いというほど見せつけた韓国だって、優勝が200対1ぐらいの賭け率ですね。それは正確なところですしね。だけども、サッカーで力が開いていても、場合によって勝てるチャンスもありますから。ベスト4というのは、普通の常識で聞けば「何を言っとるんだ?!」と思う人が多いでしょうが、監督としては、初めから負けにいくという監督はいないわけです。だから、ベスト4というのは別に妥当なもんですよね。

ベスト4を抜けて、優勝するかせんかということになると、国全体のサッカーの厚みがかなりものをいうと思います。ですけど、短期決戦では、2002年の韓国と1968年オリンピックの日本代表などもベスト4まで行きましたね。高めの望みには見えますし、日本がプレミアリーグに入ったらもちろん有り得ないですが、これはやはりスポーツの面白味ですね。日本人は日本のことを悪く言いたいですけど…

 

本多: 1勝とか、グループリーグというのはすでに達成しているのですから、目標としてはおかしくないと思うので、ベスト4で良いです。2002にグループリーグ突破という目標を果たした後の無残なトルコ戦のことは忘れられません。

 

根本: 実現の可能性ゼロとは言えないけど… 現実的なところと言えば、やっぱりグループリーグ突破かな?

 

メイブリー: 元々、誰が悪いかはあまり良く分かりませんが、この「ベスト4目標」というのは今やあまりにも大げさなことになってしまった結果、選手達に過大の負担を与えているに違いありません。プライベートでは、高い目標を設定するのは私も賛成ですが、公の話になると、マスコミやサポーターが期待し過ぎずに応援し続けてくれるように、もう少し慎重に話せば良かったです。現実的には、グループリーグを突破できれば、それだけで大成功のではないかと思います。

 

 理想や目標をひとまず置いておいて、日本代表は結局どこまで進むと思いますか?

 

賀川: 一次リーグを突破すれば、それも万歳です。全力を尽くさんと勝てないし、引き分けできないからですね。実際は、今の中村俊輔と遠藤の調子が治らなければ、それはちょっと…

 

本多: 客観的に見れば、ということならグループリーグ敗退でしょうね。ただ、どのチームも日本には必ず勝たなければいけないと考えているはずなので、その意識がチャンスではあります。

 

根本: ベスト16!希望は捨てられません!

 

メイブリー: 決勝トーナメントまで進むには、日本はカメルーン戦とデンマーク戦から勝ち点4を取り、そしてある程度の運も必要になってくるでしょう。3敗など、大失敗には終わらないと思いますが、戦術の変更が少し出遅れたこともあり、突破は厳しいかもしれませんね。

 

 

(「下:全体」はこちら)

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


英・ガーディアン紙、オブサーバー紙のW杯特集

2010/06/06(日)

本日、英・ガーディアン紙の日曜版、オブサーバー紙のW杯特集に日本代表の記事を載せて頂きました。同紙のホームページでもご覧頂けます。

 

http://www.guardian.co.uk/football/2010/jun/06/japan-world-cup-2010-fans-preview

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


【キックオフまで後7日】 準備は関係ない

2010/06/04(金)

岡田ジャパンはイングランド戦では阿部勇樹守備専任のシングルボランチで起用し、4-1-2-2-1へとシステムを変更したおかげで、パフォーマンスが大幅に向上したが、結局まさかのオウンゴール2発で逆転され、ここ5試合の記録が1勝4敗となってしまった。しかし、W杯など国際大会に向けて、しっかりした準備は本当に大切なのだろうか?ここでは歴史を振り返り、様々なトラブルを乗り越えて大成功を収めた代表チームを5つ紹介する。

 

① イタリア2006年W杯優勝

わずか4年前のドイツ大会では、イタリアは24年ぶりのW杯優勝を狙ったが、21世紀の最大サッカースキャンダルにより代表の影がすっかり薄くなっていた。2006年5月、幾つかのビッグクラブは有利な審判を選出することで、セリエAの試合結果を操作したことが明らかになり、主犯格とされたユベントスGMのルチアーノ・モッジをはじめ、クラブの役員やイタリアサッカー連盟(FIGC)の関係者が次々と辞任を表明した。

 

7月4日、イタリア代表がW杯開催国のドイツとベスト4で対決する数時間前に、この「カルチョーポリ」事件の第一審判決が下され、ユベントスは実質3部のセリエC1へ降格する他、ミランラツィオフィオレンティーナも2部のセリエBへ降格が求刑された。不祥事に巻き込まれた4クラブから、イタリア代表メンバーに13人がいた。しかし、マルチェロ・リッピ監督の選手はその夜、スキャンダルの大騒ぎにも動じず、延長戦の土壇場でドイツを破り、5日後の決勝戦(対フランス)ではPK戦の末、史上4度目の優勝を果たした。クラブはその後、仲裁裁判判決で求刑がより軽くなった。

 

② パオロ・ロッシと(また)イタリア1982年W杯優勝

パオロ・ロッシはビチェンツァでの3シーズンでリーグ戦60得点も決め、1978年アルゼンチンW杯でもベスト4進出と「イタリアらしくない」攻撃的なプレーに大きく貢献したが、ペルージャ移籍後の1979-80年シーズンには「トトネーロ」事件で八百長疑惑がかかり、3年間の出場停止処分を受けてしまった。最初から無罪を主張していたロッシは結局、1982年スペインW杯直前に出場停止が解け、代表に復帰を果たしたが、長いブランクから精彩を失ってしまったようだった。1次グループリーグでは無得点に終わり、カメルーンと勝ち点・得失点差ともに並んだイタリアは総得点差で辛うじて2位突破を決めた。

 

しかし、エンツォ・ベアルツォット監督はマスコミやサポーターの批判を無視し、ロッシを信じ続けた。その結果、ロッシはソクラテスジーコを擁する伝説のブラジルに対してハットトリックを決め、続く準決勝ポーランド戦でも2得点、決勝西ドイツ戦でも先制点を挙げることで、監督の信頼に見事に応えた。イタリアは3対1で優勝を果たしたが、ロッシはワールドチャンピオンのみならず、W杯得点王とW杯大会MVP、バロンドール、そしてワールドサッカー選出世界年間最優秀選手も飾り、盛り返しの1982年を終えた。

 

③ ブラジル2002年W杯優勝

日韓大会のブラジルは上記のイタリアとは異なり、何のスキャンダルにも巻き込まれず、他の出場国のどこよりも強かったことが明らかであるので、今になって振り返れば、当然の優勝に見えるかもしれない。しかし、本大会の直前まで、セレソンはずっと混乱状態に陥っていた。元ジュビロ磐田のルイス・フェリペ・スコラーリが(元清水エスパルスのエメルソン・レオン監督の後を受けて)代表監督に就任した、2001年6月には、ブラジルは南米予選の第13節に向けて、史上初のW杯予選敗退という崖っぷちに立っていた。

 

ブラジルは残りの6試合で勝ち点9を重ね、何とか出場権を獲得できたが、それでもフランスやアルゼンチンと同等に、優勝候補に挙げる声が少なかった。また、W杯開幕の2日前、主将のエメルソンが練習後の事故で肩を脱臼してしまい、フェリペ監督の戦術プランも完全に台無しとなった。しかし、心配は要らなかった。3R(ロナウドリバウドロナウジーニョ)の攻撃陣は合わせて15ゴールも決め、セレソンに史上5度目の世界制覇をもたらした。ところで、フランスとアルゼンチンはいずれグループリーグ敗退を喫した。

 

④ イングランド、ユーロ1996年準決勝

イングランドには残念ながらハッピーエンドはなかったが、それでも1990年代前半の低迷を考慮に入れば、いつまでもイングランド人の心に残るユーロ96の悲劇はかなりの成功だった。1994年W杯アメリカ大会には出場しなかったため、ユーロの開幕戦スイス戦はグラハム・テイラー監督の時代、9秒以内にダビデ・グアルティエリの得点を入れられたサンマリノ戦から31ヶ月ぶりの公式戦となった。テイラー監督の後任者、テリー・ヴェナブルズ監督の下でも親善試合の結果が20試合で10勝に過ぎず、ユーロ前最後の強化試合では香港の好易通聯隊に恥ずかしい1点差で辛勝した。また、香港からの帰りで、選手たちが「歯医者の椅子」の飲み騒ぎを起こし、キャセイパシフィック航空機内でテレビなどを破壊した事件も報道された。

 

スイスとは1対1の引き分けで終了したが、先制点を決めたアラン・シアラーが代表戦無得点を21ヶ月に亘る12試合で止め、潜在力をようやく発現し始めた。そして、ポール・ガスコインがスコットランド戦で天下一品のボレーシュートを決め自己パロディーを演じた名場面がきっかけに、フットボールが11日間だけホームに帰ってきてくれたドイツが準決勝で私らのパーティーを台無しにしたが、それまではシアラーはさらに4点を追加して得点王に輝き、イングランドはオランダを4対1で圧倒し、そして史上初で現在まで唯一のPK戦勝利でも果たした。

 

⑤ デンマーク、ユーロ1992年優勝

1992年のデンマーク代表はユーゴスラビア内戦により、ユーロ開幕のわずか2週間前に代わりに出場することになり、結果的に優勝まで果たしたことで、サッカー界で最も有名な「思いがけないヒーロー」とも言える。しかし、その物語は実は、約10年前まで遡る。1980年代のいわゆる「デニッシュ・ダイナマイト」が1984年欧州選手権1986年W杯メキシコ大会爆発的な攻撃と非常にクールなスタイル(そして、最高にエイティーズなチーム歌)を世界に見せ、伝説のチームとして歴史に名を刻んだ。しかし、デンマークが出場権を得られなかった1990年W杯イタリア大会までは、アラン・シモンセンセーレン・レアビーモアテン・オルセンイエスペア・オルセン動画)、フランク・アルネセンプレベン・エルケーア・ラルセン動画)といったスター選手が全員引退し、1979年からずっと指導していたゼップ・ピオンテックも監督を辞任した。

 

ピオンテック監督の後任者として、リチャード・メラー・ニールセンは当初、人気が全くなかった。チームの結果とパフォーマンスも急落し、メラー・ニールセン監督の戦術も大きく批判され、時代に跨ったラウドルップ兄弟(ミカエルブライアン)も代表を辞めてしまった。そういった中、やがてユーゴスラビアの悲惨な事情はチーム全体だけではなく、特にメラー・ニールセン監督とブライアン・ラウドルップ弟の個人としても2度目のチャンスを与えた。デンマークはピーター・シュマイケル動画)とヘンリク・ラルセンの活躍でフランス、オランダドイツを相手に3連勝し、複雑な状況にもかかわらず見事な優勝を果たした。やはり、準決勝の2日前に選手達・コーチ陣が皆で食事をマクドナルドで食べたことからも分かるように、1980年代のダイナマイト精神がまだ生き続けていた。

 

(※デニッシュ・ダイナマイトにご興味のある方には、英国・ガーディアン紙のこの特集記事(英語)と、「Og Det Var Danmark」という映画(デンマーク語、DVDは英語字幕付)が大お勧めです。)

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (0)


« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »