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【キックオフまで後22日】 岡田とカペッロが直面する、現実の問題

2010/05/20(木)

日本代表の岡田監督が上限30人の予備登録より先に本メンバー23人を発表したことは、W杯監督の中で珍しかったが、やはり予想しようがないところはそもそも、あまりなかったのである。一番驚いたのはもちろん、第3キーパーとして経験の浅い西川周作などではなく、国際Aマッチ出場116試合を誇りながらも怪我で8ヶ月も離脱している川口能活が選ばれたことだった。その他は、フォワードのバックアップとして矢野貴章(今季Jリーグ戦では12出場無得点)より前田遼一(同11出場7得点)のほうがゴールに繋がる選択だったかもしれないとは言え、南アフリカでも相変わらず玉田圭司起用する場合は矢野を招集してもおかしくないだろう。香川真司もアンラッキーだったが、大久保嘉人はやはり岡田監督の信頼が厚いようである。しかも、怪我人が出た場合は、W杯後にボルシア・ドルトムントに移籍する香川がまだ予備登録7人から選出されるチャンスが最も高いと言って良いだろう。

 

一方、この1週間でイギリスの新聞を見てみれば、イングランド代表のファビオ・カペッロ監督とその動きを予期しようとする記者の仕事はそう簡単ではないようである。30人の予備メンバー発表ではマスコミの予期に反して、ボビー・ザモラオーウェン・ハーグリーブススチュワート・ダウニングガリー・ネビルが全員アウトだった。その代わりに、国際Aマッチでの出場経験が5人合わせてもわずか107分に過ぎない若手選手、レイトン・バインズスティーブン・ワーノックマイケル・ドーソントム・ハドルストーンアダム・ジョンソンが招集された。慢性的な膝の怪我に悩まされて2007年6月から代表戦に出場していないレドリー・キングと、イングランド代表を自ら引退していたジェイミー・キャラガーも3年ぶりに復帰する。

 

突然、(英語では久しぶりに聞いた)「外国人監督」と呼ばれたカペッロ監督を褒める声が確かに少ない。記者によれば、今回のメンバーは「あまりに二流過ぎて心配だ」、カペッロ自身も「一匹オオカミだ」と言い、そして稼働延期に追い込まれた選手採点システム、カペッロ・インデックスの事件がさらに批評され大騒ぎとなった。通常は比較的穏やかなオブザーバー紙ですら、ポール・ウィルソン氏が「かつて調和と自信のあったところに、カペッロ監督が不和と不信をもたらした」と厳しく非難した。同紙のポール・ヘイワード氏もカペッロ監督をイギリスの新副首相、自由民主党ニック・クレッグ党首に例えた。初めは褒め言葉かと思ったが、小見出しを読めば、ヘイワード氏がつい最近まで政治的右派である、デイリー・メール紙に所属していたことを思い出した。

 

“イングランド代表の監督はピッチ外での規律を正し、メンバーを厳しく選択することを約束した。その約束はもう叶わないみたい”(ポール・ヘイワード氏、オブザーバー紙)

 

このような批評に関して、記者会見のコメントを基に書かれた、各自のメンバー予想が完全に外れていたことも怒りの原因の一つだっただろうが、これを認めたライターももちろん少ない。また、この新聞記事の中では、ネビル兄の有終の美を呼び掛ける声を除き、代替案を提示するものもほとんどない。実は、オーウェン・ギブソン氏が(オブザーバー紙と同じ新聞社が発行する)ガーディアン紙で述べたように、カペッロ監督のメンバー発表を冷静に分析してみれば、驚くべき要素があまりないはずである。

 

経験の浅いメンバーも確かにいるが、現段階では本メンバー23人が発表されるまで、それぞれのクラブでの大活躍を代表レベルでも見せられるかどうかを確認するチャンスと捉えれば、別におかしくないだろう。一方でキング選手の招集は、膝の痛みを乗り越えてトッテナム・ホットスパーに見事な4位入賞とUEFAチャンピオンズリーグ出場権をもたらしたことから、既に多くのサッカーファンや関係者に求められていた。キャラガーの復帰は確かに少しショックだったが、それでもディフェンスに怪我人が続出している中、キャラガーだけがここ6シーズン、リーグ戦228試合でわずか9回しか欠場していないという信頼性を提供できる。やはり、イングランドサッカー界はユーロ2008の予選敗退をきっかけにしばらく現実的になっていたものの、今はいよいよW杯ということで、昔のような過剰反応や極端に考える傾向が改めて浮かび上がってしまったようである。

 

とは言え、カペッロ監督の計画が生憎のタイミングで障害にぶつかったことは確かである。予選ではウェイン・ルーニースティーブン・ジェラードを活かし、バランスの取れた戦術をベースに(ユーロの敗退させられた、クロアチアに対して4対1と5対1の完勝も含む)8連勝と首位突破を非常にスムーズに果たすことができたが、本大会に向けてはルーニーはまさかの負傷連発、ジェラードはクラブと自分の絶不調に苦しんでいる。中盤の接着剤役を果たすボランチとして、ハーグリーブスのみならずギャレス・バリーも怪我で絶望的かもしれない。キャプテンのリオ・ファーディナンドマンチェスター・ユナイテッドでは散発的な存在となっており、スキャンダルに巻き込まれた前任者のジョン・テリーも自ら「自分は1年中素晴らしいパフォーマンスを見せ続けてきた」と豪語しながらも同意する者は誰もいないだろう。最後に、調子の良い右サイドバックも1人しかおらず、誰が中盤の右を担当するかもまだ決まっていない。

 

カペッロ監督は現時点でメンバー30人も揃っているということで、来月まで解決せねばならぬ問題が岡田監督より7つ多いだろうが、24日にそれぞれメキシコと韓国との強化試合を終えてから、イングランド代表と日本代表は30日にオーストリア・グラーツ市で史上3度目の対戦を行うことになっている。本登録締め切りの2日前、そして南アフリカ大会の開幕戦の12日前にキックオフするこの親善試合は、両監督にとって重要な情報を得る機会となるに違いない。

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