日本の地上や衛星テレビで海外や代表サッカーを語る解説者の方々へ、ちょっとお願いがある。
まだまだイギリスほどではないかもしれないが、今や日本でもサッカー中継番組のラインアップが結構幅広くなっている。去る土曜日には岡田ジャパンと南アフリカの対戦の前後、ニュージーランド対バーレーンとイングランド対ブラジルの2試合を見ることもでき、もし興奮(それとも不眠症)で眠れなかったなら、深夜にまた注目の一戦、ビセンテ・デル・ボスケのスペイン対ディエゴ・マラドーナのアルゼンチンも生中継だった。これはもちろん良いことであるし、毎週末はいつものJと(イギリス国内では生放送が禁止されている、現地3時キックオフの試合でも)プレミアのみならず、ブンデスリーガやセリエA、ラ・リーガの注目カードも観られることも、とても有り難い。しかし、この数ある試合にそれぞれ解説者を派遣することには、ヒト・カネ(・プレスパス?)の関係で無理があるだろうが、あまりに現場から離れていることをもう少し目立たなくしてくれれば良いのにと、私はよく思う。
やがてこれに飽きてしまい、最近は現地の言葉を理解できるかどうかにかかわらず、副音声がある場合はテレビが必ず外国語に切り替えるようにしている次第である。例えば、私のイタリア語力は「campionato di calcio italiano」という、中学生頃のセリエAハイライト番組のイントロから一セリフに過ぎないが、昨シーズン、インテル対マンチェスター・ユナイテッドのチャンピオンズリーグ戦はSKYイタリアの興奮しやすい解説で楽しく観戦した。解説者の仰っていたことは確かに、さっぱり分からなかったが、サン・シーロの中から、その気持ちと熱意が良く伝わった。日本の解説者も頑張っていたと思うが、やはり比べてしまえば、東京のスタジオから送られたその声はスタイルにも内容にも欠け、2人の男が普通にリビングのソファーで喋っているように聞こえた。こういうシーンになると、(イギリスのシチュエーション・コメディは除くとしても)面白さがなかなかソファーに座っている人にしか伝わらない。
普段はラ・リーガを中心に実に素晴らしいサッカー番組を提供してくれている、WOWOWでも地理的に遠距離になるにつれて無知なところが現れてしまうこともあるようである。先日、イングランド戦で解説を務めていた方はまず、ウェイン・ルーニーがキャプテンマークをつけていたことに驚いた(ここやここ、ここ、そして日本語が良いならここなど、このニュースは前日に調べてみれば広く報道されていた)が、その数分後、両チームの選手が頭を下げ、センターサークルで2列で並んでいたところ、逆に視聴者のほうが驚くべきハプニングがあった。解説の方は最初、何が起こっているか分からなかったのが惜しかったが、「あ、黙祷が行われるようです」とようやく気がつき、審判の笛が鳴った後も、誰のためかという疑問を口にしてしまったのが本当に残念だった。
まあ、誰だってちゃんと準備していないときもあるだろう。実際にその場にいなければ、最新速報もひらめきも簡単には手に入れられないことは、良く分かっている。そして、ドイツ代表GK、ロベルト・エンケの悲劇が10日から世界中のスポーツニュースで大きく扱われていたが、黙祷のときにはピンと来なくても、それは生放送のプレッシャーかもしれないのでしょうがない。ところが、万が一何も分からなくても、お願いだから話術で隠して下さい。完全な演技になっても、そのスキルのほうが無知より、われわれ視聴者にアピールするだろう。
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)