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グランパスの旗が翻り続ける

2009/10/06(火)

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)初出場の名古屋グランパスは先週、第1戦から1点リードをしていた川崎フロンターレに3対1の勝利を奪い、2戦合計4対3で準決勝進出を決めた。フロンターレは確かに4冠のタイトルを目指して厳しい日程に苦しみ、前の週末にガンバ大阪に敗北してから疲れを感じていたかもしれない。それに対して、グランパスはACLのみに集中し、いつものスタメンを温存しながらも当時首位だった鹿島アントラーズに4対1で気持ち良い快勝を収めることができた。しかし、今回の成功は決して軽視してはいけない。プレッシャーがかかった第2戦の中、グランパスは決定的な場面で力を見せ、全国のサッカーファンが評価すべきパフォーマンスだった。

 

このようにACLのベスト4まで進んできたグランパスは昨年のアジア王者、ガンバ大阪と不思議な共通点が少なくない。ガンバが準決勝で浦和レッズを倒したように、グランパスも日本勢同士の対決で勝利に飾った。全勝だったガンバに続き、グランパスもアウェイに強く、グループリーグでは蔚山現代ホランイニューカッスル・ジェッツを破った上、川崎には負けるもジョシュア・ケネディの貴重なアウェイゴールのおかげで進出のチャンスへと繋げた。そして、アジアの舞台では成長しながらも国内では調子を上げられていない中、シーズンの途中でキーマンのブラジル人FWが突然、クラブから離脱してしまった。

 

皮肉にも、7月にカタールのウム・サラルに移籍したダヴィを後悔させるチャンスが早くも、今年のACL決勝戦にでも来るかもしれない。ダヴィはベスト16の段階でまだ名古屋に属し、水原三星ブルーウイングスを破るのに貢献したが、ACLにはカップタイドという制限がないため、新チームの準々決勝(対FCソウル)に出場することもできた。ところで、ダヴィの新しいFWパートナーは、2007年にガンバから(名古屋の準決勝相手でもある)サウジアラビアのアルイテハドへ移籍し流行の発端となった、マグノ・アウベスである。

 

Jリーグから中近東へと、ブラジル人の流出が最近話題となっているが、サポーターや記者が外国人選手の移籍を議論する際、本人自身の事情を無視してしまう傾向がある。サッカー選手の年俸がどんなに良くても、生まれ育った母国や家族から離れ、新しい国で生活するのは基本的に大変なことである。また、故郷のように自然に深い絆を築くこともなかなか珍しいので、元々の目的を成就してから帰国する、或いは第3の国でまた新しいチャレンジを求めるのも当然だろう。

 

とはいえ、この選手たちは家族やキャリアではなく、ただお金が儲かるために移籍するというのは、非常に残念である。近年、ブラジル人の流出はガンバには顕著に見られるが、2005年のJ1得点王として初優勝に大きく貢献したアラウージョはブラジル代表復帰という夢もあり、帰国した後もガンバファンに愛されていた一方、今年のACLに出場もしなかったカタールのアルサッドに移籍した、レアンドロのケースは全く別物である。彼と同様に、バレも(昨)シーズンの途中でガンバを置き去りにしたが、2007年の夏にはパリ・サンジェルマンから3百万ユーロのオファーもあったので、選手として成長するつもりだったら、UAEアルアハリ(今年のACLでは1分け5敗)には行かなかっただろう。

 

とにかく、日本勢としてACLを3連覇し、そしてFIFAクラブワールドカップにも出場するチャンスが残っているのは、 ドラガン・ストイコビッチの名古屋グランパスだけである。ヨーロッパでは、イングランド勢から3チームもUEFAチャンピオンズリーグの準決勝まで進めたのに対し、日本勢は抽選に恵まれず、直接対戦が多いのが残念(この2年で外国チームに負け敗退したのは、鹿島だけ)であるが、浦和とガンバに続き、グランパスもアジア王者になれば、Jリーグの優位性をこれまでよりも証明できる。ケネディ(現在12出場7得点)はもとよりダヴィの後任として、バレーの代わりにガンバに入ったロニー12出場3得点)より遥かに良い結果を残しているので、優勝の可能性が十分あるだろう。

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