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2009年10月

7対0のセブンスヘブン

2009/10/28(水)

J1で攻撃的サッカーを理念とする2チームにとって、明暗の第30節だった。ガンバ大阪10位に沈んでいる横浜マリノスのまとまった守備をなかなか崩せず、痛み分けを覚えた一方、川崎フロンターレは首位のプレッシャーを感じることなく、サンフレッチェ広島対0大量点差で冷静・冷酷に圧倒した。

 

確かに、サンフレッチェの若手DF森脇良太が前半25分に警告2枚で退場になったことも大きかったが、それでも自ら優勝を諦めていなかった相手を無慈悲に攻撃し続けた、川崎のパフォーマンスを損ねることはない。サンフレッチェは10月に入ってからすでにガンバと清水エスパルスと引き分けていたし、先制されて1人少ないままでも我慢しつつ、同点のチャンスを何度か作りだした。こうした中、鄭大世が後半16分にようやく追加点を決めると、フロンターレはこれからのチャレンジに向けて温存モードに入り、最後まで2点リードを守り切ろうとしてもおかしくなかった。しかし、単なる勝利に満足せずに、むしろ20分でさらに5点も加えたことで、「日程がいくら厳しくてもエネルギーは十分あるぞ」という、力強いメッセージを優勝争いのライバルに放った。

 

残り4試合、恐らく5チームも現実的な優勝見込みがある中、この「7」は最終的に得失点差で大きなアドバンテージに繋がるかもしれない。フロンターレはまだ1度もタイトルを獲得できていないが、僅か5年前からJ1に昇格してから、あっという間に毎年、常時優勝候補というレベルまで到達した。鄭大世やジュニーニョの得点力に恵まれ、2006年と昨年にはJ1最多得点で準優勝を果たした、川崎風の攻撃的サッカーは今年も全国の注目を集めている。

 

これまで、国内外のカップ戦でも「あと1歩」というところで不運を悔やむパターンが多いが、来週のヤマザキナビスコカップ決勝で2004年のチャンピオン、FC東京を破れば、悲願の初トロフィーが手に入る瞬間はついに訪れる。決勝戦は2007年の同カップでガンバ大阪に惜敗して以来、初めてとなるが、偶然にも、その直前のJ1第30節でも7対0の大勝利を記録した。完敗した相手は、FC東京だった。

 

一方、せっかく中位の低迷から抜け出し、何とかチャンスを取り戻したガンバはマリノスに勝てず、ただ今はやはり、優勝する要素がまだ備わっていないかもしれない。先週コラムでは、ガンバがレアンドロの移籍以来、よりチームとして戦えるようになったと述べたが、24日には相手のプレッシングに対応できず、シュートを8本しか打てなかった。パスをいくら回してもゴールにはならないスコアレスドローを見ながら、私はガンバファンとして、攻撃の軸となるFWをたっぷり揃えている川崎が羨ましかった。

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予測不可能な、J1優勝争い

2009/10/21(水)

J1の結果を予測するのは、明らかにやめておいたほうが良い。一貫して勝ち続けていた清水エスパルスが首位に立ち、念願の初年間優勝に近付いていると思った矢先、何と最下位の、勝たなければ5戦も残して降格が決定する大分トリニータ負けてしまう。エスパルスにとってはわずか5敗目だったが、今年の優勝争いも大混戦となっている中、最終的に優勝するチャンピオンは二桁の敗数を記録する可能性が十分ある。

 

5ヶ月も首位で独走していた鹿島アントラーズの泥沼化は、この大混戦において最も顕著な症状だけではなく、最も大きな原因とも言える。ACL敗退の後にもリーグ戦の好調が続き、前半戦を13勝3分け1敗の成績で折り返したが、それ以来、第29節までの12戦では、クラブワースト5連敗を含む7回も敗北を喫している。2位との勝ち点差が一回、10まで広がっていたので、急失速しながらも2週間前までは首位を守れたが、現在はトップと勝ち点差1で2位へ落ちている。次の2節は残留争いに巻き込まれたジェフユナイテッド千葉モンテディオ山形を相手にホーム連戦なので、これをきかっけに調子を取り戻しかつてない3連覇を果たすチャンスはまだまだあるが、8月23日からリーグ戦で1勝も挙げられていない中、期待し過ぎないほうが良いかもしれない。

 

新しく首位に立った、川崎フロンターレは現在J2降格圏内の3チームと対戦する他、あと2試合がホームなので、優勝候補の中で一番優しいラスト5戦になりそうである。調子もなかなか良く、これまでの10試合で勝ち点19を取れてきたが、9月の浦和レッズ戦ガンバ大阪戦など、いざというときに弱いという疑問点もあり、鹿島の低迷にもう少しつけ込みたかっただろう。フロンターレは現時点で恐らく最強のチームだろうが、これから25日のサンフレッチェ広島戦と11月3日のナビスコカップ決勝戦(対FC東京)とテンションの高い試合が続き、3冠争い(ACL敗退までは4冠争い)を目前にハードなスケジュールに耐え切れるのか。

 

こうした中、首位と勝ち点17差で前半戦を折り返したエスパルスがいきなりトップに立った。大分で敗れ、また4位に落ちたが、それまでは6月27日のFC東京戦からリーグ戦で13試合無敗だった。今週末もまた、逆転優勝をまだ諦めていないFC東京を日本平へ迎えるので、勝ち点3で大分ショックをすぐになかったことにしたいだろう。しかし、得点力が少し心配である。8月初めからのリーグ戦10試合のうち、2点以上のゴールを決めた試合は5対1で快勝した静岡ダービー(対ジュビロ磐田)のみである。

 

一方、ガンバ大阪はこの1、2ヶ月でようやく調子を取り戻してきた。晩春・初夏には信じられないホーム5連敗を喫し、鹿島との勝ち点差が19まで広がり、ACLとナビスコカップから姿を消した。サポーターは会長と喧嘩したり、何も知らないライターは選手のやる気を疑ったりするほど、危険状態にあった。しかし、現在までの10試合で勝ち点21も取れ、何とか再び優勝争いに復帰できた。レアンドロがタイトルや得点王争いを見捨て、カタールへ移籍した後も、結果的に1人のスターに頼らず、よりチームとして戦えるようになった。今は得点数もJ1ベスト、失点数もトップ8で最も多いということで、昔のように「さすがガンバ」と言える。残りのホーム戦(次の2節は横浜Fマリノス京都サンガ、そして最終節は降格がそれまでに決まることも考えられる、ジェフユナイテッド千葉)はすべて勝てそうというか、11月には清水と鹿島とアウェイで直接対決が続くので、ホーム戦で勝ち点9がとにかく必須条件と思えば良い。

 

このアウェイ連戦は確かにガンバにとって厳しいだろうが、4年ぶりにJ1優勝は手に届かなくても、2試合の結果によって優勝争いは大きく左右するに違いない。トップ4が勝ち点2差でひしめき合うJ1ラスト5戦であるが、その下にも5~8位のアルビレックス新潟、サンフレッチェ広島、FC東京、浦和レッズも潜んでおり、川崎と勝ち点差がそれぞれわずか6に過ぎない。予測できるのはまさに、何も予測できないとの事実のみである。

 

 

優勝候補の一覧

 

川崎フロンターレ(現:首位、勝点52、得失15

29節までの10戦:○○●○△●●○○○(勝点19

残りの5戦:広島(H)、千葉(H)、大分(A)、新潟(H)、柏(A)

 

鹿島アントラーズ(現:2位、勝点51、得失10

29節までの10戦:●○●○●●●●●△(勝点7)

残りの5戦:千葉(H)、山形(H)、京都(A)、G大阪(H)、浦和(A)

 

ガンバ大阪(現:3位、勝点50、得失15

29節までの10戦:△○○●○○△○○△(勝点21

残りの5戦:横浜FM(H)、京都(H)、清水(A)、鹿島(A)、千葉(H)

 

清水エスパルス(現:4位、勝点50、得失13

29節までの10戦: ○△○○△○○○△●(勝点21

残りの5戦:FC東京(H)、柏(A)、G大阪(H)、横浜FM(A)、名古屋(H)

 

アルビレックス新潟(現:5位、勝点46、得失12

サンフレッチェ広島(現:6位、勝点46、得失11

FC東京(現:7位、勝点46、得失8)

浦和レッズ(現:8位、勝点46、得失3)

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初愛媛

2009/10/14(水)

体育の日の3連休は四国で旅行し、ガンバ大阪の天皇杯2回戦(対流通経済大学)には行けなかったが、その機会を利用し、初めてニンジニアスタジアムで愛媛FCのホーム戦を生観戦した。

 

2番好きなチームと言えば言い過ぎかもしれないが、6年前、大学研究の中で愛媛FCのことを初めて調べてから、結果ぐらいはずっと見守ってきた。実質4部の四国リーグから昇格を果たした2000年から着実な進展を見せ、当時はJFL3シーズン目を16チーム中3位という成績で終了したが、完全プロ化とJリーグ加盟を目指したピッチ外の動きのほうが、私の関心を惹いた。

 

この目標はようやく、2006年に実現した。J2初戦は、1万922人のサポーターの前で横浜FCを迎え、猿田浩得の土壇場ゴールで1対0の勝利を飾った。それ以来は結果がずっと素晴らしいとは言えないが、愛媛FCはいつもJリーグに彩りを添えており、アジア王者の浦和レッズを敗退させ天皇杯ベスト8まで進んだ2007年には、全国の注目を集めた。

 

Ehimeavispa_3

 

現在、普通のJ2ホーム戦では3000人程度、先月の四国ダービー(対徳島ヴォルティス)ではほぼ13000人のサポーターがニンジニアスタジアムで集まったが、11日のアビスパ福岡戦は天皇杯(JFA主催で、シーズンシートなどでは入場できない)というのもあり、観客動員数が僅か1216人だった。しかし、ピッチは明るい太陽の光を浴びた中、スタジアムの雰囲気が十分盛り上がっていた。私と友達は万博を懐かしむ芝生で足を伸ばし、ゆっくり観戦できた。私たちの周りに子供が遊びながら、その母親と父親が前の席で試合に集中した。選手の声もしばしば聞こえてきて、田舎町の地元のチーム、トーントン・タウンを思い出したが、先制点が入ると応援団の情熱がますます表に出て、「もてこい!」という言葉がガラガラのスタンドに響いた。

 

愛媛FCは結局、72分に2対2で同点に追いつかれ、PK戦の末に敗れたが、試合後は四方八方から温かい拍手を浴びた。各地のコミュニティーで社会貢献を目指すJリーグ百年構想の精神に従って、性別や年齢層を問わず、地元の人たちが楽しいひとときを過ごせたことが、一番重要だった。

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グランパスの旗が翻り続ける

2009/10/06(火)

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)初出場の名古屋グランパスは先週、第1戦から1点リードをしていた川崎フロンターレに3対1の勝利を奪い、2戦合計4対3で準決勝進出を決めた。フロンターレは確かに4冠のタイトルを目指して厳しい日程に苦しみ、前の週末にガンバ大阪に敗北してから疲れを感じていたかもしれない。それに対して、グランパスはACLのみに集中し、いつものスタメンを温存しながらも当時首位だった鹿島アントラーズに4対1で気持ち良い快勝を収めることができた。しかし、今回の成功は決して軽視してはいけない。プレッシャーがかかった第2戦の中、グランパスは決定的な場面で力を見せ、全国のサッカーファンが評価すべきパフォーマンスだった。

 

このようにACLのベスト4まで進んできたグランパスは昨年のアジア王者、ガンバ大阪と不思議な共通点が少なくない。ガンバが準決勝で浦和レッズを倒したように、グランパスも日本勢同士の対決で勝利に飾った。全勝だったガンバに続き、グランパスもアウェイに強く、グループリーグでは蔚山現代ホランイニューカッスル・ジェッツを破った上、川崎には負けるもジョシュア・ケネディの貴重なアウェイゴールのおかげで進出のチャンスへと繋げた。そして、アジアの舞台では成長しながらも国内では調子を上げられていない中、シーズンの途中でキーマンのブラジル人FWが突然、クラブから離脱してしまった。

 

皮肉にも、7月にカタールのウム・サラルに移籍したダヴィを後悔させるチャンスが早くも、今年のACL決勝戦にでも来るかもしれない。ダヴィはベスト16の段階でまだ名古屋に属し、水原三星ブルーウイングスを破るのに貢献したが、ACLにはカップタイドという制限がないため、新チームの準々決勝(対FCソウル)に出場することもできた。ところで、ダヴィの新しいFWパートナーは、2007年にガンバから(名古屋の準決勝相手でもある)サウジアラビアのアルイテハドへ移籍し流行の発端となった、マグノ・アウベスである。

 

Jリーグから中近東へと、ブラジル人の流出が最近話題となっているが、サポーターや記者が外国人選手の移籍を議論する際、本人自身の事情を無視してしまう傾向がある。サッカー選手の年俸がどんなに良くても、生まれ育った母国や家族から離れ、新しい国で生活するのは基本的に大変なことである。また、故郷のように自然に深い絆を築くこともなかなか珍しいので、元々の目的を成就してから帰国する、或いは第3の国でまた新しいチャレンジを求めるのも当然だろう。

 

とはいえ、この選手たちは家族やキャリアではなく、ただお金が儲かるために移籍するというのは、非常に残念である。近年、ブラジル人の流出はガンバには顕著に見られるが、2005年のJ1得点王として初優勝に大きく貢献したアラウージョはブラジル代表復帰という夢もあり、帰国した後もガンバファンに愛されていた一方、今年のACLに出場もしなかったカタールのアルサッドに移籍した、レアンドロのケースは全く別物である。彼と同様に、バレも(昨)シーズンの途中でガンバを置き去りにしたが、2007年の夏にはパリ・サンジェルマンから3百万ユーロのオファーもあったので、選手として成長するつもりだったら、UAEアルアハリ(今年のACLでは1分け5敗)には行かなかっただろう。

 

とにかく、日本勢としてACLを3連覇し、そしてFIFAクラブワールドカップにも出場するチャンスが残っているのは、 ドラガン・ストイコビッチの名古屋グランパスだけである。ヨーロッパでは、イングランド勢から3チームもUEFAチャンピオンズリーグの準決勝まで進めたのに対し、日本勢は抽選に恵まれず、直接対戦が多いのが残念(この2年で外国チームに負け敗退したのは、鹿島だけ)であるが、浦和とガンバに続き、グランパスもアジア王者になれば、Jリーグの優位性をこれまでよりも証明できる。ケネディ(現在12出場7得点)はもとよりダヴィの後任として、バレーの代わりにガンバに入ったロニー12出場3得点)より遥かに良い結果を残しているので、優勝の可能性が十分あるだろう。

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