上下のプレッシャー
Jリーグの日程が発表された頃、ACLベスト16という一発勝負の直後に大分トリニータとのアウェイ戦に臨むことになった鹿島アントラーズは、JFAや「日程くん」(日程を決めるソフト)に嫌われているかと思ったかもしれない。しかし、優勝争いを最後まで戦った、2008年の堅守の大分は一気に調子が逆転し、今年はまだ勝ち点4しか取れていない上に、すでに昨年の年間失点数を超えているので、このスケジュールは結局厳しいどころか、むしろ大変やさしいものとなった。J1首位の鹿島はリズムに欠け、54分に清武弘嗣に先制点を奪われたが、それでも楽に逆転し、リーグ戦12連敗となるトリニータに次の敗北を負わせた。これにより、2位のアルビレックス新潟との勝点差は7のまま、アントラーズの連勝は7へと伸びた。
にもかかわらず、アジアの舞台でまた大きな失望を味わった鹿島は今季初めて、真価が問われている感じがする。絶好調のFCソウルにPK戦で負けたからと言って、必ずしもプレッシャーに弱いというわけでもないが、シーズンの焦点や気持ちはACL敗退によって変わってしまうというのは、避けられないことである。先週は、第一のハードルをクリアできれば、リーグの余裕を活かし悲願のアジア初制覇に挑戦していくと話したが、この夢が消えてしまい、これからはリードを守るしかない。今週、ACL準々決勝へ無事に進出した名古屋グランパスと川崎フロンターレを相手にアウェイ連戦が続くが、この2試合でパフォーマンスを取り戻さなければ、(優勝候補の2番手とも言える)川崎との勝ち点差が2まで縮まる可能性が十分ある。
前回、鹿島は「すでにアジアのベストとも言える」と述べたし、PK戦を除けば、3月18日の上海申花戦を皮切り、公式戦18戦無敗中のアントラーズに対する意見と尊敬は変わっていない。しかし、鹿島の独走と3連覇を止めたいフロンターレやアルビレックス、浦和レッズ、ガンバ大阪といったライバルのサポーターはつい4年前、2005年の優勝争いを振り返ってみれば良い。鹿島は機関車のような勢いでシーズンスタートを切り、開幕から8試合で7勝1分けという記録を残した。7月3日、第13節の清水エスパルス戦は2対1で勝ったことで、勝ち点を早くも32、2位のガンバとの差を勝ち点10へと伸ばした。ところが、梅雨明けの頃、急ブレーキがかかった。メンバーが現在とあまり変わらない鹿島は第12節から最終節まで、1度も連勝できなかった。清水戦のちょうど2ヶ月後、9月3日にガンバが順位を上回りトップに立った。結局、アントラーズは最後の10試合で7回も引き分け、シーズンを3位で終了した。
ところで、この12連敗と泥沼の大分では、クラブを次々と成功へ導いたペリクレス・シャムスカ監督の時代はそろそろ、終わりを告げる可能性が高まっている。2005年9月にボタフォゴから来日した、言わば無名のシャムスカ監督は13試合で勝ち星がなかったトリニータにとって守り神のような存在となった。就任から6試合で5勝1分けという見事な成績を残し、J2に落ちそうだった大分は無事に11位で終了した。スタイルはブラジルの攻撃的なイメージとは正反対かもしれないが、安定した守備と戦略をベースに、昨年はナビスコカップでクラブの初タイトルに輝き、リーグも33得点・24失点という記録で史上最高の4位になった。皮肉にも、いわゆる「シャムスカ・マジック」が切れてしまうと、就任前の低迷を連想させる連敗が続いているが、まかり間違っても、大分のファンは幸せな思い出を忘れないで欲しい。イーブンパーより、ジェットコースターの波乱万丈のほうがやはりだいぶ面白い。
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