日本人の交渉術や外交手腕はいつも、外国人にとって非常に興味深いことである。例えば、日本語では尊敬語や謙譲語など、同じことを言うのに幾つもの表現方法があり、相手や場面に考量して適切な言い方を選択する必要がある。交渉の場面で、「NO」と言いたいときは「ちょっと難しいかも知れない」と痛手を和らげようとすることが一般的である。また、高級ホテルであれマクドであれ、サービス業の現場で働いている歩兵は(とにかく、欧米と比べ)みんな、お客さんにどんなことを言われても一生懸命、丁寧に対応してくれる。一方、次々とスキャンダルに巻き込まれ、見境なく相手や国民に対して無神経な言葉を言うほうが、政治家や主要機関の代表(つまり、外交的手腕が仕事の方)なら「普通」という気がする。
「向こうが神経過敏だった」と言い張る者もいるが、東京の閣僚たちはとにかく、もっと気をつけなければならないことがもう分かっているはずである。日本の総理大臣は毎年のように交代するが、現職の麻生太郎首相は幾つかの思い付きのような発言もあり、永遠の与党自由民主党は来月の衆議院議員総選挙で鳩山由紀夫代表の民主党に政権を奪われる可能性が高いという。昨年の9月、麻生内閣が成立してたった3日後、すでに日本を『単一民族』と表現していた国土交通大臣、中山成彬氏が『日本の教育のガンは日教組』と発言し、翌日にその責任を取り辞任することとなった。が、それ以来は総理大臣自身がこの不思議なパターンをまるで新しいレベルに持ってきた。わずか10ヶ月の政権で、医師は『社会的常識がかなり欠落している人が多い』と述べたり、日本の親を批判したり、高齢の患者に対して『たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ…私の方が税金は払っている』と言ったりした結果、高齢者など自民党の支持者が一気に急減してきた。しかし、今振り返ってみると、2001年自由民主党総裁選挙の頃、野中広務について『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』という差別発言疑惑などの歴史もあり、最近のコメントは驚くべきというより、「さすが麻生」と言って良いだろう。皮肉にも、1987年以来の14人の総理大臣のうち、政権を無事に3年以上維持できたのは、同党総裁選挙で麻生氏に勝利した、小泉純一郎元首相だけである。
こういった政治議論を背景に、今月の万博記念競技場も大変なことになっており、ガンバ大阪の金森喜久男社長は5日間に2回も怒ったサポーターに立ち向かわざるを得ない状況が続いた。11日の清水エスパルス戦の試合前には、金森が新スタジアムの企画について(幾つものテークで録画された)発表を行い、概ね万博の拍手を浴びたが、「具体的な内容は?!」という一部の声もあり、ホーム4連敗となる1対4の惨敗の後は、ガンバの監督やフロントに対して世論の風潮が一段激しくなった。そこで、金森の態度も変わり、高慢や怒りっぽさが現れてしまった。試合後、およそ1000人のサポーターが1時間程度、北ゴール裏で居残り抵抗をしていたが、金森は小さなマイクを持ち、ようやくスタンドの前に姿を表すと、突然「うるさいなあ!」とイライラを表に出した。そして、試合内容にもかかわらず90分も歌い続けた、ファンの罵倒がさらにノリノリになるのは当たり前であるが、空気を読んでいないかのように、金森はサポーター側ももっと応援しなければならないというふうに答えた。
これに続き、ガンバは15日のナビスコカップ戦で横浜Fマリノスにも敗れた後、アンコールが繰り返された。今回は、平日の影響もあり人数が約300人へと減少していたが、居残り抵抗や金森との緊急集会が2時間以上も続き、最後のサポーターは結局、深夜0時頃にスタジアムを去った。今にして思えば、最初に金森がサポーターに立ち向かったこと、そしてパニックせずに監督の西野朗への信頼を強調したことは、評価すべきである。確かに、金森は60年も日本の縦社会のルールに従ってから、周りの人に「社長様」と呼ばれるステータスまで上昇してきた中、大衆から批判されるのは大変だろうし、集会が進むにつれて、その態度が多少落ち着いたのも事実である。しかし、政治と同様に、地元の人々との良好な関係がプロサッカークラブにとって何より欠かせないものである。残念ながら、金森の当初の対立的なアプローチは「我々を分かってくれない」というサポーターの疑念を裏付けてしまった。もしガンバは土曜日にJ1最下位の大分トリニータにも負けたとすれば、抵抗は夜の何時まで続いたのだろう。
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