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2009年6月

勝利者はすべてをさらってゆく

2009/06/23(火)

J1は4週間の中断明け、ようやく再開するや否や、日本サッカーの注目はもう一度アジアの舞台に戻る。今年から拡大したAFCチャンピオンズリーグでは、参加チームが昨年の29チームから32チームへとわずかしか増加していないが、全体的なレベルが明らかに上がっているため、新しく設けられた決勝トーナメント1回戦(ベスト16)が最も興味深い革新となるかもしれない。昨年の大会までは、各組1位のチーム(と前回の優勝チーム)が直接ベスト8に進出したのに対して、今年は各組2位のチームにも2度目のチャンスが与えられたが、いつものH&Aでのトーナメント方式とは違い、この1回戦は全て一発勝負、純粋なカップ戦として、1位チームのホームで開催される。

 

この新しいフォーマットはすでに意外な結果をもたらしている。今回も準々決勝まで東西に分かれており、西地区のベスト16戦は東地区に先行して中断前に行われたが、グループ1位の4チームのうち、3チームも地の利を活かせず、ベスト8進出を逃してしまった。サウジアラビアのアルヒラルはグループAで勝ち点14(4勝2分け)を挙げ、グループFのガンバ大阪(勝ち点15)に次いで良い成績でグループリーグを突破したにもかかわらず、地元リヤドでC組2位のウッム・サラル(カタール)と0対0で引き分けし、PK戦で早くも敗退することとなった。ウズベキスタンの2チーム、パフタコールブニョドコルは両方ともグループ2位で終了したが、決勝トーナメント1回戦はアウェイ戦に挑み、それぞれアルイティファク(サウジアラビ)とペルセポリス(イラン)に勝利を収めた。結局、西地区ではサウジアラビアのアルイテハドだけが1位チームとして、同国のアルシャバブを倒し、無事にベスト8進出を決めた。

 

東地区のベスト16戦は24日(水)に行われるが、各国の代表試合やリーグ中断の直後というタイミングも、この一発勝負にどれだけの影響を与えるのか。日本勢から3チームはグループリーグ首位で突破したが、川崎フロンターレは第6戦、ホームで韓国の浦項スティーラースに負け、順位を上回られた。その結果、今週はアウェイで、同じJリーグのガンバ大阪と対戦することになり、いずれにとっても、決して理想的な組み合わせとは言えない。ディフェンディングチャンピオンのガンバはACLでは5連勝を飾り、余裕でグループ首位を手にしたが、国内ではなかなか一貫したパフォーマンスを見せていない。キーマンのレアンドロ遠藤保仁は怪我で欠場、加地亮と二川孝広も回復したばかりというのもあり、中断明けの初戦でアルビレックス新潟に敗れ、公式戦・ホーム3連敗を喫した。それに対して、川崎は最下位の大分トリニータに2対0で快勝し、アウェイ戦も現在連勝中である。フロンターレは2005年にJ1に復帰して以来、万博での成績が1分け3敗と、1回もガンバに勝っていないが、今週は初勝利を掴む可能性が十分あるだろう。

 

名古屋グランパスは20日、J1・16位のジェフユナイテッド千葉にホームで痛い敗戦を喫したが、ACLベスト16の相手、韓国王者の水原三星ブルーウィングスは初戦で鹿島アントラーズを4対1で下して以来、絶不調に陥り、現在は15チームのKリーグで11位に沈んでいる。鹿島はもちろんその後、見事に調子を取り戻し、3対0で水原三星にリベンジも果たしたが、今週のFCソウル戦はオリヴェイラ監督とその選手たちにとって、運命の一戦とも言えるだろう。この2年、鹿島のリーグ連覇はガンバと浦和レッズのアジア制覇によって影が薄くなり、クラブワールドカップの出場権も2回とも奪われてしまったが、昨年のACLベスト8で敗れたアデレード・ユナイテッドはその後、ガンバに3回も圧倒され、アントラーズの悔しい思いがさらに募っただろう。

 

鹿島は現在、J1首位で独走し始めているので、その余裕を活かし、今年こそ悲願のアジア初制覇にどんどん挑戦していきたいだろう。最近の絶好調を維持できれば、すでにアジアのベストとも言えるだろうが、そのタイトルに向けて、ベスト16の一発勝負というプレッシャーが最大のハードルとなるかもしれない。

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喜びと成功を計る

2009/06/15(月)

英語では、「バスをずっと待っていると、いきなり2台も同時に来てしまう」ということわざがあるが、交通機関がちゃんと時間通り走る日本では、あまり通じないだろうね。とにかく、今週も注目されるクラブ戦があまりないので、前回に続き、また代表サッカーについて書きたいと思う。具体的に、前回のコラムに、


『これぐらいの方がちょっと躍進できただけで喜べるちょうどいいレベルなんだぜ?イングランドとか優勝しないと喜べないだろ』


というコメントを頂き、ここで挙げられた2つの面白いポイントについていろいろと考えてきた。

 

もちろん、日本のサッカーがここ1520年でかつてない急成長を遂げてきたということは、いくら強調しても強調し過ぎることはないだろう。しかし、この点は確かに、ヨーロッパではあまり認識されていないかもしれない。これは何故かと言えば、多くの欧州サッカーファンはいわゆる「トップレベル」の国内リーグやチャンピオンズリーグで頭がいっぱいというのももちろんあるが、日本は高度な経済力や技術力で知られていることから、どの分野においても、世界舞台に立ってもおかしくないという感じがあると思う。現在は毎回、W杯に出るが、たった11年前のフランス大会までは出場権を1回も得ていなかったことも忘れてはいけない。個人的に、Jリーグ開幕とゲリー・リネカーの来日の頃から日本のサッカーを興味深く観察してきたが、ほぼ20年も経っており成長は減速の兆しを見せず、外国人の私でも大変喜んでいる。今回は議論しないが、今やJリーグが欧州と中南米を除き、世界一の国内リーグとも言える。

 

しかし、私の前回言いたかった要点は結局、今月のW杯アジア予選で十分証明されただろう。日本代表韓国オーストラリアとともに、予想通りに2試合(最終予選の8試合の4分の1)も残し、余裕を持ち南アフリカへの出場権を獲得できた。そこで、ヨハネスブルクでの開幕戦まであと1年を切り、アジア枠の4.5ヶ国のうち、3つがすでに埋まっていた。たぶん、自分の国だと捕らぬ狸の皮算用はしないが、客観的に見ると、大失敗がなければ岡田ジャパンは無事に突破するということは最初から分かっていた。このように楽に突破できるというのはもちろん素晴らしいことであるが、私にとっては、2007年のアジアカップ敗退から現在まではドキドキすることがあまりなく、実に面白いチャレンジはこれからである。

 

因みに、イングランドでは確かに、1試合だけ勝てば「必ず優勝する」、1戦だけ負ければ「史上最低」と極端に言ってしまう癖があるが、イングランド代表は1966の1回しか優勝していないので、必ずしも優勝しなければ喜べないわけでもない。スティーブ・マクラーレン監督がユーロ2008予選敗退を喫して以来、サポーターやマスコミの期待はより現実的になってきているが、一般的に世界ランキングで6~10位以内のチームとして、W杯やユーロで準々決勝敗退がイーブンパーの成績になる。だから、1990年W杯イタリア大会自国開催ユーロ96のように、ベスト4まで進め1つでもアンダーになるときは、全国が一体となり、普段はサッカーを見ないおばあさんまで大いに興奮する。サー・ボビー・ロブソンは(8ヶ国のユーロ84で予選敗退、1986ユーロ88でベスト8敗退という成績を残してから)イングランド代表を1990年の準決勝へ導いたことで、結局スヴェン・ゴラン・エリクソン(2002から2006まで3大会連続で準々決勝敗退)と同じくイーブンパーで代表監督キャリアを終えたが、1バーディーを奪ったおかげで、ロブソン時代はエリクソンとは違い、いつまでも懐かしく思い出される。

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キリンカップ優勝に乾杯

2009/06/02(火)

このコラムをスタートしてほぼ1年が経ち、初めて日本代表について書くことにした。代表戦が面白くないわけでもなく(地元の8部リーグでも面白く見られるなら、やはりどの試合でも楽しめるだろう)、日本のゴールが決まると無意識に「やった!」と叫び出すので、外国人だからといって岡田ジャパンに興味がないわけでもない。しかし、日本のサッカーがこの十数年でどんどん成長してきた結果、サッカー界ではもう小さな国でもないがまだまだ世界に誇ることもない、という少し中途半端なレベルになってしまい、個人的にアジアの予選試合でなかなか盛り上がらないというのは確かである。

 

簡単にいえば、日本代表がアジア予選で失敗してしまい、ワールドカップに出られなくなることはもう考えられない。韓国、そしてAFCに加入してレベルアップしたオーストラリアもたぶん同様であり、また、サウジアラビアも(サイード・オワイランのスーパーゴールもあり決勝トーナメント進出に成功した)1994年のアメリカ大会以来、少し低迷しているにもかかわらず、W杯予選ぐらいは毎回突破できている。アジアの46ヶ国のうち、W杯に出場できるのは4つか5つと少なく聞こえるが、イランイラク北朝鮮バーレーンウズベキスタンなどがより一貫して勝てるレベルまで上達しなければ、日本が予選を突破しても当たり前、それだけであまり喜べない、というようになっている。さらに、アジアカップが2007年大会から従来より1年早く開催されるようになってからは、夏期オリンピックやユーロと開催年が重ならず、W杯からリズムや競技レベルも維持できるという効果があったが、その決勝戦が終わるとすべてがやはり静かになってしまう。W杯の3次予選がその翌年にようやく始まるが、インドオマーンといった国を破りグループ2位以内を目指すという「チャレンジ」は、サポーターや選手にとってテンションがなかなか上がらなくてもおかしくない。

 

しかし、今やこの周期の頂点がいよいよ回ってきている。先週のキリンカップは日本代表にとって、今月のW杯最終予選の3試合に向けて壮行試合として行われたが、3月にバーレーンに勝ったことで南アフリカの出場権がほぼ決定的となったため、今回は来年の本番に向けて準備のスタートを切ったとも言える。今年の招待チーム、ベルギ代表とチリ代表はクラブ試合の関係で(前者の国内リーグでは、スタンダール・リエージュアンデルレヒトが勝ち点で並び、優勝プレーオフも特別に行われた)、確かにフルメンバーではなかったが、だからこそ、岡田ジャパンにかなりのプレッシャーがかかっていた。2試合とも4対0で快勝したというのは、見事な答えだった。

 

清水エスパルス岡崎慎司は3ゴールも決め(今年は代表戦7出場で6得点)、現在脚光を浴びているが、彼とは他に、チーム全体として大きなプラスが2つあった。1つは、過去の日本代表に強いフォワードがいなく、得点を中盤に頼らざるを得なかったのに対して、現在はチャンスを作ったりゴールを決めたりできる選手が守備からフォワードまで、多く存在している。さらに、岡田監督は、山田直輝山口智,に(それぞれ、18歳と31歳で)デビューの機会を与え、本田圭佑の成長にも恵まれ、幾つかのコンビを試すこともできた。世界でベスト4という目標がかなり厳しいかもしれないが、4年前と比べると、現在の日本サッカーには人材が溢れており、来年はスタメンだけではなく、メンバーの23人に絞るのも大変な問題になりそうである。南アフリカへの道のりはまだまだ長いが、岡田ジャパンは良いスタートを切った。

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