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17歳の天才

2009/05/27(水)

「天才。」

「ガンバの宝。」

「クラブ史上最高の素材。」

 

宇佐美貴史はプロ試合で初めてボールを蹴る前にも、四方八方から大絶賛を浴びていた。昨年、ガンバ大阪のJユースカップ優勝やAFC U-16選手権で見事なパフォーマンスを見せたことで、日本サッカー界の注目を集めた。情報時代の影響もあり(YouTubeで宇佐美の動画が数万回数十万も見られている)、高校2年生としてガンバのトップチームに昇格してから、宇佐美のプロ活躍が全国から大いに期待されている。そして、この1週間で公式戦初出場、初得点も記録し(1714日で、クラブの史上最年少デビュー記録も更新した)、Jリーグ初出場も果たし、スポーツ用品メーカー大手のアディダスとスポンサー契約も結んだ。宇佐美の名前を知らない日本のサッカーファンはもう、1人もいないだろう。

 

こういう中で、クラブ側からの期待が最も意味深いものである。Jリーグの歴史がまだ浅く、ガンバは地元での存在感を高めるのに苦労してきたとはいえ、この数年でチームの成功がアジア最高級のユース育成システムという基盤の上に成り立っている。そのOBとして、アイントラハト・フランクフルト稲本潤一や元日本代表キャプテンの宮本恒靖がW杯や欧州リーグの舞台でも輝いた。また、安田理大橋本英郎もガンバユースを卒業し、現在のトップチームと日本代表でトップレベルまで成長してきた。17歳の若さで、宇佐美が偉大な先輩の足跡をたどるだけではなく、クラブ史上最高の素材とコーチたちに言われているのは、素晴らしい褒め言葉である。

 

これから大事なのは、宇佐美自身のみならず、サポーターやマスコミの足もしっかり地に着いていることである。前園真聖が日本サッカー界で初めて、いわゆる「スター・システム」の犠牲者となってしまったが、外圧に負けることはなくても、若い選手の育成がやはり複雑なものである。中山悟志2002年のトゥーロン国際大会で得点王になり、ガンバで決勝ゴールを幾つかあげたが、結局J1通算で100出場10得点と大きな期待に応えられず、現在はピークの年齢でJ2の下位チーム、ロアッソ熊本でプレーしている。イギリスでは、フェデリコ・マケダがマンチェスター・ユナイテッドのプレミアリーグ優勝に貢献したことはクラブの歴史に残るだろうが、その将来はライアン・ギグスと同じように進展するのか、若しくはマーク・ロビンスと同じように姿を消すのかは、時間が経ってみなければ分からない。

 

しかし、宇佐美には大きなポテンシャルがあることは言うまでもない。先日、サー・アレックス・ファーガソンはファビオ・カペッロに「ダニー・ウェルベックが来年のW杯に行くぞ」と訴えたが、西野監督ならそのようなことはしないとはいえ、若い選手を信じるとともに、自制も強く求めるからこそ、ユース育成の面ではファーガソンにも匹敵するほどの実績を誇る。日本代表の岡田監督は宇佐美の初ゴールのニュースに対して「あ、そうですか」とあまり関心を示さなかったかもしれないが、キリンカップのメンバーで22歳以下の選手が7名も選ばれたことから、実力を見せ覚悟ができているなら、10代の若手選手にもチャンスがあるということが分かる。宇佐美のキャリアがどうなっていくかは、まだまだ誰も知らないが、ガンバや日本サッカーのファンにとって、やはり大きな楽しみに違いない。

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