2、3年前の雨の土曜日、大学時代の仲間で集まって映画を見たところ(もちろん、サッカーはオフシーズンだったが)、ある1人が飲み会に参加せず、急いで先に帰った。数ヶ月、毎日14時間も働いていたがゆえに、目が充血し、疲労を一目で分かるような顔をしていたあの友達は、やはり週末にしっかり熟睡しなければ、すぐに体を壊すに違いないと言った。そこで、私は「仕事頑張り過ぎないでよ」と、さようならの挨拶をしたが、どこか行き違いがあったようだった。友達はこう答えた。
「というか、そんなに忙しいとは言えないけどね。ただ、先輩がいつも朝の8時に出勤するから、あたしは先に、7時ごろに着かないと、ちょっとまずいでしょ。」
この発言に驚いたのは、唯一の外国人の私だけだった。確かに、外国では有り得ない話とは言い切れないかもしれないが、日本の大企業で働いた自分の経験から、このように体裁のために残業せざるを得ない日本人がかなり多いだろう、と思うようになってきた。それに加え、上司や先輩の提案が明らかに間違っていても、若い部下や後輩が何とも言えなく従ってしまうという悪循環も断ち切れず、無駄な残業が多くの職場で一般的に発生しているに違いない。吉田茂総理大臣とその内閣が戦後の世界政治情勢をうまく読んだ結果、国が活気づき、数十年にわたるかつてない成長と繁栄も引き起こされたということは、私も高く評価したいと思うが、当時に生まれた世代の保守的な考え方が現在の社会人に苦労をもたらしているではないかとも思われる。日本の技術が世界中に愛され、国民は自分を捨て会社のために一生懸命働くので、効率を落とすのではなく、効率に繋がる職場マナーさえあれば、国と経済はどれだけ強くなるのだろう、と私はよく痛感する。
もちろん、現在は世界規模の不況の中、あらゆる会社や金融機関は事業を合理化し、無駄やロスを徹底的に削減するという急務に迫られている。経営環境が厳しくなっても日本なら何とか対応できるというが、今回の危機は日本においても大幅な雇用喪失に繋がっているため、残業の負担を解消する動きがようやく始まっている。この目的に向けて、アプローチや手段が様々あるだろうが、とにかく、17日のガンバ大阪対モンテディオ山形のJリーグ戦が1万159人のサッカーファンにとって、残業せずに早めに退社する、非常に良いインセンティブとなった。
サッカーと金曜日の関係は複雑なものである。テレビの影響や、UEFAカップの日程が木曜日に集中していることで、世界に広く注目される試合が週に6日行われるが、ブンデスリーガの1試合を除き、金曜日だけは注目カードがほとんどない。イングランドでは最近まで、復活祭の前の聖金曜日(キリストの十字架の死を記念する休日)だけにプレミアリーグなどの試合が特別に1日繰り上げられていたが、この習慣は拡大したUEFAチャンピオンズリーグの影響で失われてしまい、現在は土日なら注目されない、2部以下の試合を1つ、2つぐらい前倒しにする、という程度である。日本においても、17日の試合はもちろん(ガンバが21日にインドネシアでアウェイ戦があったことを受け)例外的であり、入場者数が万博の土日平均に比べて少なかったので、二度とないことにとどまるかもしれない。応援団の太鼓が21時以降禁止されているというのもあり、やはり日本はまだ平日のサッカーに向いていないという声もあるだろう。
しかし、私とともに現場にいた皆さんにとっては、記憶に残る経験となった。人数は水曜日の試合とあまり変わらなかったとは言え、「今から週末だ!」という気持ちでテンションが上がり、雰囲気は土日並みに十分盛り上がった。太鼓の禁止は少人数のアウェイファンにとって特に残念なことだった(声援だけに変わった21時直後、ガンバは逆転し勝利を掴んだ)が、わざわざ山形から来てくれたサポーターの情熱も印象に残り、認めるべきである。やはり、サッカーファンとして残業をせず、経済に貢献するのが非常に楽しいことである。本当は、金曜日のサッカーを増やそうと提案したいと思うが、やはり、私はまだ影響力を持つ人が相手にしてくれる年ではないだろう…
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