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大は小を兼ねる?

2009/03/24(火)

今年から拡大したACLの第2日が終わり、新しいフォーマットが見事なスタートを切った。いわゆる強豪国から出場チームが増えた結果、全体的なレベルが上がっており、これまでスコアの高くて面白い試合が数々ある。2007年と2008年の大会に続き、日本勢はさらに勝ち続ける姿を示しており、名古屋グランパスガンバ大阪川崎フロンターレは3チームともそれぞれのグループリーグで首位に立ち、一度も黒星を喫していない。鹿島アントラーズは初戦で水原三星ブルーウィングスに完敗したが、少なくとも上海申花には上回り、グループ2位で決勝トーナメントに進出できそうである。

 

ACLの改革について、AFCからのリリースなどで「プロ化」というキーワードがよく使われていた。大会自体の構造変化とともに、参加基準も厳しくなってきたが、各国の協会やクラブがその標準を満たすように努力すると、アジアサッカーはプレーや施設、仕組みといった様々な面でレベルアップする、というのが狙いである。これまで、頻繁に5点以上の敗北をなめてきたベトナム勢やタイ勢の代わりに、既に標準を満たしている、大きな国のチームがより多くの出場権を得るようになった。トップレベルに挑戦する準備ができるまで、小さな国のクラブはそのレベルに合わせた、AFCカップに参加し、優勝者が翌年のACL予選に出場できる。イギリスのガーディアン紙のジョン・ダーデンが指摘するように、同じチームや選手が毎年ACLに出場すると、認識やライバル心の醸成、そしてACLそのものの成長へと繋がる、という考えもある。

 

しかし、この改革を支える理念も十分論理的であり、賞金の額なども世界レベルで比較的に低いとはいえ、AFCのチャンピオンズリーグはヨーロッパと同じく、持てる者と持たざる者の格差を広げてしまうことがないように注意しなければならない。欧州の頂点が決まる大会がUEFAチャンピオンズリーグとして再編成された、1992-93シーズンのベスト8には、プレミアリーグとラ・リーガからは1チームもなかったのに対し、クラブ・ブルージュ(ベルギー)、レンジャーズ(スコットランド)、IFKイェーテボリ(スウェーデン)、CSKA モスクワ(ロシア)といった、今ならいわゆる弱小国から4チームもあった。しかし、その10年後、強豪国から出場チームの数が増えていた結果、マンチェスター・ユナイテッドアヤックスに加え、イタリア勢とスペイン勢はそれぞれ3チームも準々決勝まで進出した。また、今年のベスト8のうち、昨年と同じチームが5つもある。

 

チャンピオンズリーグの影響は国内サッカーにも広がっている。現在のJリーグの魅力はどこにあるかと言えば、意外性や、複数のチームが最後まで優勝を争うというところだろうが、ヨーロッパのリーグも昔、競争が現在と比べてかなり激しかった。プレミア、チャンピオンズとJリーグが生まれた1990年代には、ノーウィッチ・シティブラックバーン・ローバーズや(つい2003年まで)ニューカッスル・ユナイテッドもイングランドの優勝候補だったが、今年まで、同じ4強(マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーアーセナルリバプール)がチャンピオンズリーグ圏を5年続けて独占している。フランスでは、リヨンは今シーズン、8連覇を狙っている。イタリアのセリエAはチャンピオンズリーグ設立前の10年間、サンプドリアナポリベローナも優勝に輝いたが、今はミランインテルユベントスの3強がほぼ揺るぎない地位を占めている。

 

もちろん、各クラブやそのサポーターが私利を図り、自分たちが地域のトップに立ちたいというのは当然である。しかし、イングランド勢が30年前にヨーロッパを支配していた頃とは違い、アストン・ビラノッティンガム・フォレストにとってチャンピオンズリーグ優勝はもう考えらないことになった。UEFAの中にも、チャンピオンズリーグの構造や影響に対する反発が高まっている。ACLの拡大がアジアサッカーの成長に繋がれば良いが、そのために接戦や公平な競争は犠牲になってはいけない。

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コメント

改革賛成だけど、決勝の中立地開催は反対。
あれは大陸が狭く移動の負担が軽いからできる。
例えば中東のクラブが勝ちあがって、東京まで何人のサポーターが応援に来れるだろ?
なんでもかんでも欧州路線はいただけない

投稿: | 2009年3月25日 (水) 00時47分

めっちゃ興味深い記事、ありがとう。

言われてみれば
プレミアでもつい最近までNew Castleって強いイメージあったし
セリエAもLazioは強かったよね…。

本当にUCLの常連って決まりつつあるなぁ

こうなったらportoにMAN-Utd破ってもらおうか(笑)。

投稿: とくちゃん | 2009年3月29日 (日) 14時43分

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