イギリスで、サッカーを「a funny old game」と言うのであるが、私の目から見ると、野球のほうがだいぶ不思議なものである。多くのイギリス人とは違い、私は野球が嫌いなわけでもなく、ルールや用語もだいたい分かっているし、甲子園で阪神タイガーズを楽しく生観戦することもある。1試合はサッカーの倍ほど、3時間ぐらいかかるにもかかわらず、様々な理由でトップチームでさえ勝率が6割に過ぎず、下のチームでも4割ぐらい勝っているので、毎年140試合以上もやらないとどこがベストかが決まらないが、これでも理解できる。しかし、このようにほぼ7ヶ月にわたって、毎週6試合もやるのに、レギュラーシーズンが終わった時点で順位表がなぜいきなり捨てられ、実際のチャンピオンがなぜ僅か4週間の少数のプレーオフ試合で決まるのか、ということはさっぱり理解できない。
今月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はもちろん、特殊なケースである。アメリカや日本では国内野球の忙しい日程が変えられないので、世界大会はプレシーズンに勝ち残り式でやるほか仕方がない。しかし、また不思議なことに、このWBCで第1ラウンドを突破したチームは第2ラウンドでまた同じ相手と組まれることになる。さらに、ベスト4や決勝戦では負ければ終わりというのに対し、第1と第2ラウンドでは敗者復活戦もあるため、初戦で負けてもリベンジのチャンスを与えられる。その結果、日本代表はWBCで9試合のうち、決勝相手の韓国と5回も対戦した。しかも、どちらかが最初の4試合とも全部負けた場合でも、先週、ドジャー・スタジアムで行われた決勝戦で再び対戦する可能性が十分あった。
結局、決勝トーナメントに向けて日本と韓国は日韓戦で2試合ずつ勝ったが、決勝戦では原監督の「侍ジャパン」が延長戦で辛うじて勝利を収め、めでたい2連覇を果たした。つい8年前、イチローが日本人野手として初めて大リーグに挑戦し、デビューシーズンに首位打者になったが、それ以来、松井秀喜や松坂大輔など、日本のスター選手が相次いでメジャーに行き、実績を残している。このように絶好調の日本野球は今回、2006年の初回に続き、再び世界のトップに立っている。一方、アメリカにとっては「われわれのワールドシリーズ」という考え方から脱却し、イングランドの国技のように、「外国」のプレーから学ぶことがあると認めざるを得ない。
しかしながら、日本にとっては良いことばかりとは限らない。近年の高齢化社会や少子化とともに、サッカーの人気化も日本の野球に影響を与えており、現在は絶好調にもかかわらず、近未来に後退が進むという懸念もある。高校野球が国民に愛されているが、野球をする子供たちが少なくなると、甲子園の大会だけではなく、プロ野球のレベルも下がってしまう可能性がある。だからこそ、北米以外の国も参加できる世界大会は日本にとっても、革新を促進するきっかけにするべきである。現在の勢いを失わず、むしろさらに増すためには、固定概念から抜け出し、育成の考え方などを広くする必要がある。日本野球の各機構・協会・連盟はプライドを捨て、そもそも「サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること」を狙う、Jリーグの百年構想とより緊密に協力すれば良いだろう。
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