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高校数学とサッカー

2009/02/03(火)

学校で勉強したことの中で、相関係数は何故かずっと記憶に残っている。ちょうど10年前、16歳で高校生の頃、得点力の高いマンチェスター・ユナイテッドはより堅守のアーセナルと、1998/99シーズンのプレミアリーグ優勝に向けて必死に争っている最中だった。そこで、数学の先生にこの相関係数を実例に適用するという宿題を出されたことを受け、授業で学んだ数学で、友達との優勝争いの議論に決着をつけることにした。つまり、得点を挙げるのか、得点を与えないのかという、サッカーの基本的要素からどちらのほうがリーグの勝点に繋がるのか?

 

計算の詳細はここで省く(簡単にいえば、相関係数は1、又は-1に近ければ近いほど関係が強い)が、ユナイテッドのファンとして結果に満足できた。前年の1997/98シーズンの順位表を分析し、得点と勝点との正相関(0.905)が失点と勝点との逆相関(-0.822)より強かった、ということが分かった。イングランドの2部~4部のデータもすべて、同じ傾向を示した。つまり、優勝の確率を左右する要因として、ユナイテッドのアンディー・コールドワイト・ヨークがアーセナルのトニー・アダムスマーティン・キーオンより影響を与えられるだろう、というように勝手に解釈した。

 

ユナイテッドはもちろん、その年のリーグだけではなく、FAカップとチャンピオンズリーグも獲得し3冠王に輝いた。しかし、2009年のユナイテッドには世界一とも言えるフォワード陣が揃っているにも関わらず、守備陣のほうが結果に貢献している。エドウィン・ファンデルサールはリーグ戦12試合連続完封でイングランドの新記録を樹立する一方、チームはクラブワールドカップ後のリーグ戦7連勝のうち5勝が1対0で辛勝した。防御はひっくり返し、最大の攻撃になったのだろうか?

 

数字によると、ユナイテッドの見込みはまた良好である。昨シーズンのプレミアリーグでは10年前と違い、失点の係数(-0.945)が得点(0.879)より勝点と近い関係を示し、実は、過去5年間のうち3シーズンも同様だった(また、2005/06シーズンの相関は、得点も失点も同じ値だった)。これに対して、1998/992002/03の5年間では、4シーズンにおいて得点の影響が最も強かったのであり、かなりの差が出た場合もあった。(皮肉にも、ユナイテッドが3冠王を達成した1998/99シーズンだけが例外である。)

 

相関係数(イングランド・プレミアリーグ)

1997/98: 0.905-0.822 攻撃の影響が最強

1998/99: 0.827-0.845 守備

1999/00: 0.852-0.806 攻撃

2000/01: 0.905-0.901 攻撃

2001/02: 0.911-0.798 攻撃

2002/03: 0.931-0.833 攻撃

2003/04: 0.889-0.899 守備

2004/05: 0.837-0.891 守備

2005/06: 0.914-0.914 同値

2006/07: 0.954-0.859 攻撃

2007/08: 0.879-0.945 守備

 

Jリーグにも、これと似たような傾向の兆しが現れている。1シーズン制に移行した2005年以来、毎年、得点枠と勝点枠の関係が最も強かったが、この傾向は昨年、一気に逆転し、失点のほうが最終順位に影響を与えた。2005年に優勝した、ガンバ大阪の積極的な攻撃(得点82、失点58)と昨年の鹿島アントラーズのスタイル(得点56、失点30)を比較すると、この数的推移を思い浮かべられるだろう。また、昨年の大分トリニータアルビレックス新潟に次いで2番目に少ない、33得点しか挙げられなかったにも関わらず、J1最少の24失点を記録した守備のおかげで順位を4位まで上げた、ということも意味深いだろう。

 

相関係数(日本・Jリーグ)

2005: 0.807-0.710 攻撃

2006: 0.877-0.740 攻撃

2007: 0.820-0.795 攻撃

2008: 0.667-0.810 守備

 

しかし、イギリスと日本はこうなっているからといって、同じ傾向が世界中にも広がっているとは言い切れない。ドイツやスペイン、イタリアといったトップリーグの数字によると、得点力のほうが守備力より結果に繋がるようであり、アジアの例も挙げると、韓国のKリーグも同様である。仮説を立ててみると、「守り」の重視はリーグの全体的な強さを暗示するかもしれない。例えば、マンチェスター・ユナイテッドの1999年チャンピオンズリーグ優勝はイングランド勢にとって1985年のヘイゼルの悲劇以来初めてとなり、相関係数の傾向が逆転した2003年まで、プレミアリーグからさらに2チームしかヨーロッパのベスト4まで進むことができなかった。しかし、これに対して、2004年以来のイングランド勢は欧州制覇を2回、準優勝を3回、またベスト4を5回も達成している。日本のトップクラブもアジアを支配しはじめており、同時にJリーグが毎年ますます混戦になっていることから全体的なレベルが上がっていると考えられる。

 

相関係数(その他、2007/08

ドイツ(ブンデスリーガ1): 0.888-0.737 攻撃

イタリア(セリエA): 0.934-0.846 攻撃

スペイン(プリメーラ・リーガ): 0.848-0.788 攻撃

韓国(Kリーグ): 0.769-0.749 攻撃

 

従って、2009年のJリーグでも守備を重視したほうが有利のようであり、注目を集めた移籍の中でディフェンダーの動きが少なくないということもこの傾向の兆候かもしれない。しかし、このような数値を考慮するにあたり、やはり多少割り引いて解釈する必要もある。何故なら、決定的な結論に到達するには、論文になってしまうほど、この記事の範囲より多くのリーグや多くのシーズンを徹底的に分析しなければならない。しかも、ベンジャミン・ディズレーリが語った通り、世の中には3つの嘘がある。一つは嘘、次に大嘘。そして統計である。

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