« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月

いよいよ開幕: ①下位争い

2009/02/24(火)

アジアとヨーロッパのサッカーを両方とも見るなら、シーズンのタイミングがずれて楽しめることが春夏秋冬にある一方、開幕に向けてドキドキする気持ちが少し薄まってくるという裏面もある。なぜなら、Jリーグの新シーズンがスタートする頃は、心はすでに欧州の優勝争いやチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに奪われている最中だからである。しかし、私は今年、例年とは違い、ヨーロッパのサッカーを見ながら日本の移籍市場にも熱中したり、パンパシフィックチャンピオンシップのテレビ中継も見たり、生観戦の寂しい空白を埋めるためにラグビー試合にも行ったりするようになっている。2009年のJリーグ開幕は待ち遠しくてたまらない。

 

これは、この仕事の影響でもあるかもしれないが、最も大きな原因はきっと昨年の、「アンコール!」と叫びたくなるぐらい劇的なクライマックスだろうと思う。自分が好きなガンバ大阪ACL・天皇杯の2冠と、CWCの3位とマンチェスターユナイテッド戦は1回限りの喜びとして片づけても、Jリーグ自体も例年よりも大混戦になり、テンションが最終節に向かってますます上がっていた。鹿島アントラーズが結局2連覇を果たしたが、第32節まで6チームもまだ現実的な見込みがあり、名古屋グランパス川崎フロンターレ最後の試合まで諦めなかった。残留争いもさらに激しく、最終節に向けて13位の大宮アルディージャまで降格する恐れが残っていた。最終的にコンサドーレ札幌東京ヴェルディがJ2に戻ることになったが、JEFユナイテッド千葉はシーズンの最後の16分で、FC東京に大逆転し4対2で勝利を収め、間一髪で降格を免れた。

 

ミラー監督の影響で、第17節まで勝点10しか取れなかったJEFは、残りの17試合では勝点を28も挙げ、1年中同じペースで勝点を重ねれば4位で終了したので、この好調が続くと今シーズンは順位を上げ、残留争いに巻き込まれないだろう。しかし、16位で終了した、名門のジュビロ磐田は昨年、ベガルタ仙台との入れ替え戦で辛うじて残留を決めたが、ジュビロをよく知る柳下正明が新監督に任命されたにも関わらず、今年も決して落ちるには強過ぎるとは言い切れない田中誠の後継として那須大亮がヴェルディから入団したが、それ以外のニューフェースがあまりいなく、得点は怪我がちの前田遼一に頼ってしまう傾向がまた続きそうである。J2から優勝へと独走したサンフレッチェ広島と2位で昇格したモンテディオ山形は少なくとも、昨年の札幌とヴェルディよりJ1でも挑戦できそうなので、2009年は昨年よりも失敗の余地のない残留争いとなるだろう。

 

このような中、大宮やアルビレックス新潟京都サンガなども前進しなければ必ず後退し、残留が危うくなる恐れもあるが、もう1つの名門の横浜Fマリノスは現在、岐路{きろ}に立っているといって過言ではない。20032004年の2連覇を達成して以来、9位・9位・7位・9位というリーグ成績はマリノスのような歴史を誇るチームにとって受け入れ難いが、それにも関わらず、今年はジュビロと同様に移籍がほとんどなく、現有戦力と若手に将来を賭けるようである。期限付き移籍していたアビスパ福岡から復帰するフォワード、ハーフナー・マイクは昨年、J2の舞台で7ゴールを挙げたが、個人とチームの成長は彼がまだ1点も取れていないJ1でも成績を出せるかどうかにかかっているかもしれない。

 

次回に続く

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


大阪の現況: ②その解決案

2009/02/17(火)

前回から続く

 

大阪にはガンバセレッソもあるが、このほか、2チームが同じ都市名を名乗っている例は東京と横浜の2つしかなく、この特徴は珍しい利点とも考えられる。何故なら、世界中のサッカーは地元と深い関係{のうりょく}を培うというホームタウンの理想だけではなく、チーム同士のライバル感にも力を得て栄えるからである。身近にライバルがあれば、チーム自体の切磋琢磨にも繋がるが、それよりも、地元サポーターの関心が高まるという効果も生まれる。しかし、これを実現するには、まずはそれぞれのチームが何を代表しているかを、はっきりと明確にする必要がある。

 

サッカーの町は宗派(スコットランド・グラスゴーのセルティックレンジャーズ)から社会階級(アルジェンチン・ブエノスアイレスのリバー・プレートボカ・ジュニアーズ)や政治(スペイン・バルセロナエスパニョール)など、様々なアイデンティティによって分裂している。しかし、最も一般的な分け方はもちろん地理上の境界線であるが、「大阪」という名前に愛着が強い大阪でも、地理的に二等分するのが比較的容易である。何故かというと、梅田と心斎橋・難波という都心がそれぞれ「キタ」と「ミナミ」というあだ名で知られているほど、大阪には明らかな南北分割が見られる。従って、「吹田市」や「北摂エリア」というような行政区画はサッカーでは物にならないが、大阪を中之島や本町で分け、いわゆる北部がガンバで南部がセレッソということにすると、きっと使い物になるだろう。

 

もちろん、このようなホームタウン革新を実施するにあたり、両クラブが一丸となって取り組む必要もある。ここに曲折も予想されるが、大阪でサッカーに対する全体的な関心を促進するというのは、個々のクラブの成長のためにも最も効果的な方法である、ということを認めると、こういった協力のベネフィットが分かる。また、「私たちはキタ派」、「私たちはミナミ派」や、より競争的な「私たちこそが大阪」というような共同マーケティング戦略なども考えられる。もし、このような活動がアイデンティティという効果をうまくもたらせば、神戸や京都など、大阪以外のチームや地域に広げることもできる。

 

この提案にデメリットももちろんある。セレッソは現在の勢力圏から大阪市の一部を失ってしまい、ガンバもビッグクラブになろうとしている中で、南大阪と距離を置きたくないかもしれない。しかし、密な協力による社会的統合や共存共栄はこういった欠点を遥かに上回るのに違いない。関西のクラブに子供のサポーターが比較的に多いので、このクラブ同士のライバル感が学校や遊び場の話題にもなれば、将来性が確実にある。社会的な問題について資本主義的な比喩を用いてしまうが、小さなパイのシェアを争うのではなく、このようにパイを全体的に大きくするほうが、ガンバとセレッソにとって相互利益に繋がるだろう。

 

世界中の注目を集めるミランダービーは15日に行われ、インテルが2対1で地元ライバルのACミランを破り、セリエAの4連覇へ大きな一歩を踏み出した。その結果、町の人口の半分は大いに興奮している一方、残りの半分は月曜日の出勤や通学に気がほとんど進まなかっただろう。ガンバ対セレッソは何十年経っても、同じように世界{せかい}の注視{ちゅうし}を浴びることはないかもしれないが、大阪の職場や学校もこういった、世界の各国にあるようなサッカー意識とライバル感で盛り上がる日は、いつ訪れるだろう。

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (0)


大阪の現況: ①その課題

2009/02/12(木)

2009年のJリーグ日程が6日に発表され、各地のサポーターや関係者は開幕戦などを調べたり新シーズンに向けてドキドキしはじめているところである。しかし、大阪のサッカーファンにとっては、物足りない気持ちが続く。何故なら、セレッソ大阪は昨年、惜しくも4位で終了し昇格を逃したため、ガンバとの大阪ダービーは今年も復活しなかったからである。確かに、日本で最も注目を浴びる一戦とは言えないだろうが、このダービーはガンバが2006年9月に3対1で勝利して以来、公式戦で3シーズンも日程から消えているということは、両クラブのサポーターにとって情けない状況である。

 

Jリーグが創設直後、急に拡大したということは、野球が盛んな関西地方では理想的ではなく、むしろ様々な問題を引き起こしたのに違いない。オリジナル10の1つだったガンバに加え、ヤンマーが尼崎から引っ越しセレッソを立ち上げ、1995年からJリーグに加盟した。それから、京都にパープルサンガ(現:京都サンガ)、日本サッカーの発祥地とも言える神戸にヴィッセルも次々と発足し、それぞれ1996年と1997年からJリーグの出場権を獲得した。つまり、ガンバはJリーグのブームのときに唯一の関西代表から、1990年代後半の低迷の頃に3つのライバルと顧客獲得争いを繰り広げるようになってしまい、平均観客動員数も僅か5年でピークの22,367人(1994年)から7,996人(1999年)まで減少した。

 

もちろん、人々が大きな誇りを持っている、「大阪」という名前に対する独占権を失ったことも大きいだろう。プロサッカーを日本の社会に新しく紹介するにあたり、サッカーの社会学における不可欠{ふかけつ}な要素であるアイデンティティを狙いとしたJリーグの「ホームタウン」制と「百年構想」が非常に賢いものだった。しかし、ガンバの所在地及びホームタウンとなった吹田市の大部分は1960年代以降に開発されたニュータウンから成り、多くの住民が第1または第2世代であるため、吹田とは強いきずなができているとは言えない。ガンバは北摂と北河内というエリア名も掲げ、宣伝や触れ合い活動の範囲を広げてきたが、やはりこの地名にも愛着があまりなく、ここの代表になろうとしてもコミュニティ感がなかなか生まれない。一方、セレッソ大阪のホームタウンは大阪市であるが、ここにもセレッソファンの数だけガンバファンも混在している限り、セレッソの町という感覚が薄い。

 

4年前の話であるが、私は大学の研究で万博と長居スタジアムでサポーターに対して意見調査を行い、こういった問題の結果が明らかになった。ガンバのホームタウンはどこにあるかという質問に対して、サポーターの答えにバラつきが激しく、クラブの勢力圏がやはり非常に曖昧だった。また、ほぼ8割の回答者はガンバが地域に根差していないという意見を表明し、半分以上も「サポーターを大事にしてくれない」という不満も表した。セレッソファンの意見はそこまで熱くなかったが、否定的な回答の割合は万博と同様だった。しかし、ガンバのクラブハウスでこの結果を発表させてもらったとき、フロントの方に少し軽視されたというのは、最も憂慮すべきことだった。

 

フロントのメンバーやスタンスが少し変わり、現在の状況は比較的良くなりつつあるが、大阪人のサッカーに対する関心はまだ気まぐれである。万博で満席の試合が確かに頻発になってきたが、これはきずなの証というよりチームの強さの影響であり、昨年は順位と共に平均観客動員数も5年ぶりに下がった。セレッソもJ2に降格した結果、観客動員数がほぼ半減してきた。関西のサッカーの未来のために、このような問題を解決していく必要があるが、まずは考え方を逆転し、むしろ潜在的なベネフィットに集中すれば良いと思う。大阪に2チームがあるというのはマイナスではなく、むしろプラスと考えるべきである。

 

次回に続く

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


高校数学とサッカー

2009/02/03(火)

学校で勉強したことの中で、相関係数は何故かずっと記憶に残っている。ちょうど10年前、16歳で高校生の頃、得点力の高いマンチェスター・ユナイテッドはより堅守のアーセナルと、1998/99シーズンのプレミアリーグ優勝に向けて必死に争っている最中だった。そこで、数学の先生にこの相関係数を実例に適用するという宿題を出されたことを受け、授業で学んだ数学で、友達との優勝争いの議論に決着をつけることにした。つまり、得点を挙げるのか、得点を与えないのかという、サッカーの基本的要素からどちらのほうがリーグの勝点に繋がるのか?

 

計算の詳細はここで省く(簡単にいえば、相関係数は1、又は-1に近ければ近いほど関係が強い)が、ユナイテッドのファンとして結果に満足できた。前年の1997/98シーズンの順位表を分析し、得点と勝点との正相関(0.905)が失点と勝点との逆相関(-0.822)より強かった、ということが分かった。イングランドの2部~4部のデータもすべて、同じ傾向を示した。つまり、優勝の確率を左右する要因として、ユナイテッドのアンディー・コールドワイト・ヨークがアーセナルのトニー・アダムスマーティン・キーオンより影響を与えられるだろう、というように勝手に解釈した。

 

ユナイテッドはもちろん、その年のリーグだけではなく、FAカップとチャンピオンズリーグも獲得し3冠王に輝いた。しかし、2009年のユナイテッドには世界一とも言えるフォワード陣が揃っているにも関わらず、守備陣のほうが結果に貢献している。エドウィン・ファンデルサールはリーグ戦12試合連続完封でイングランドの新記録を樹立する一方、チームはクラブワールドカップ後のリーグ戦7連勝のうち5勝が1対0で辛勝した。防御はひっくり返し、最大の攻撃になったのだろうか?

 

数字によると、ユナイテッドの見込みはまた良好である。昨シーズンのプレミアリーグでは10年前と違い、失点の係数(-0.945)が得点(0.879)より勝点と近い関係を示し、実は、過去5年間のうち3シーズンも同様だった(また、2005/06シーズンの相関は、得点も失点も同じ値だった)。これに対して、1998/992002/03の5年間では、4シーズンにおいて得点の影響が最も強かったのであり、かなりの差が出た場合もあった。(皮肉にも、ユナイテッドが3冠王を達成した1998/99シーズンだけが例外である。)

 

相関係数(イングランド・プレミアリーグ)

1997/98: 0.905-0.822 攻撃の影響が最強

1998/99: 0.827-0.845 守備

1999/00: 0.852-0.806 攻撃

2000/01: 0.905-0.901 攻撃

2001/02: 0.911-0.798 攻撃

2002/03: 0.931-0.833 攻撃

2003/04: 0.889-0.899 守備

2004/05: 0.837-0.891 守備

2005/06: 0.914-0.914 同値

2006/07: 0.954-0.859 攻撃

2007/08: 0.879-0.945 守備

 

Jリーグにも、これと似たような傾向の兆しが現れている。1シーズン制に移行した2005年以来、毎年、得点枠と勝点枠の関係が最も強かったが、この傾向は昨年、一気に逆転し、失点のほうが最終順位に影響を与えた。2005年に優勝した、ガンバ大阪の積極的な攻撃(得点82、失点58)と昨年の鹿島アントラーズのスタイル(得点56、失点30)を比較すると、この数的推移を思い浮かべられるだろう。また、昨年の大分トリニータアルビレックス新潟に次いで2番目に少ない、33得点しか挙げられなかったにも関わらず、J1最少の24失点を記録した守備のおかげで順位を4位まで上げた、ということも意味深いだろう。

 

相関係数(日本・Jリーグ)

2005: 0.807-0.710 攻撃

2006: 0.877-0.740 攻撃

2007: 0.820-0.795 攻撃

2008: 0.667-0.810 守備

 

しかし、イギリスと日本はこうなっているからといって、同じ傾向が世界中にも広がっているとは言い切れない。ドイツやスペイン、イタリアといったトップリーグの数字によると、得点力のほうが守備力より結果に繋がるようであり、アジアの例も挙げると、韓国のKリーグも同様である。仮説を立ててみると、「守り」の重視はリーグの全体的な強さを暗示するかもしれない。例えば、マンチェスター・ユナイテッドの1999年チャンピオンズリーグ優勝はイングランド勢にとって1985年のヘイゼルの悲劇以来初めてとなり、相関係数の傾向が逆転した2003年まで、プレミアリーグからさらに2チームしかヨーロッパのベスト4まで進むことができなかった。しかし、これに対して、2004年以来のイングランド勢は欧州制覇を2回、準優勝を3回、またベスト4を5回も達成している。日本のトップクラブもアジアを支配しはじめており、同時にJリーグが毎年ますます混戦になっていることから全体的なレベルが上がっていると考えられる。

 

相関係数(その他、2007/08

ドイツ(ブンデスリーガ1): 0.888-0.737 攻撃

イタリア(セリエA): 0.934-0.846 攻撃

スペイン(プリメーラ・リーガ): 0.848-0.788 攻撃

韓国(Kリーグ): 0.769-0.749 攻撃

 

従って、2009年のJリーグでも守備を重視したほうが有利のようであり、注目を集めた移籍の中でディフェンダーの動きが少なくないということもこの傾向の兆候かもしれない。しかし、このような数値を考慮するにあたり、やはり多少割り引いて解釈する必要もある。何故なら、決定的な結論に到達するには、論文になってしまうほど、この記事の範囲より多くのリーグや多くのシーズンを徹底的に分析しなければならない。しかも、ベンジャミン・ディズレーリが語った通り、世の中には3つの嘘がある。一つは嘘、次に大嘘。そして統計である。

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »