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叶った

2008/12/16(火)

今年のクリスマスは1週間早めに来る。ACL決勝のような完勝はなかったが、プレーオフでワイタケレ・ユナイテッドに辛勝したアデレード・ユナイテッドとの再試合で、ガンバ大阪は1対0でぎりぎりの勝利を収め、FIFAクラブワールドカップ準決勝進出を決めた。大きなステージという緊張感を感じていたか、まずは初戦だけに集中すると西野監督が強調しながらも選手やサポーターはやはり相手を少し軽視してしまったかもしれないが、内容はともかく、結果が大事である。次は夢のように、18日に横浜国際競技場で、世界の名門のマンチェスター・ユナイテッドと対戦する。

 

ジェレミー・ウォーカーもコラムで語る通り、クラブワールドカップの意味はこのような試合にある。ヨーロッパではUEFAチャンピオンズリーグが最頂点と見られ、実力且つ経済上では確かにその通りであるが、クラブワールドカップの存在そのものが既に、4年間という短い歴史で各地域のサッカー発展に繋がっている。ACLも活性化され、関心が著しく高まってきた日本では、各クラブはアジアと世界のトップへ挑戦するチャンスに向けて(また、その経験を通じて)レベルアップを図っている。昨年の浦和レッズは日本勢で初めてのACL王者として、ACミランと対戦し史上初の欧州対アジアの公式戦も実現したことが、埼玉だけではなく、全国やアジアのサッカーファンにも夢を育ませた。これからの勝敗を問わず、今年のガンバも夢に手が届いた。

 

もちろん、ACミランに続き、マンチェスター・ユナイテッドも伝統あるあるクラブであり、イングランドのサッカー界の中でも開拓者という評判も誇る。協会の反対にもかかわらず、マット・バスビー監督の決意のおかげでイングランドのクラブも1956年から当時の欧州チャンピオンズカップに出場することになり、1958年のミュンヘンの悲劇では多くの主力選手を失ったが、僅か10年でチームが立て直され、イングランド勢で初めて1968年のヨーロッパ王者に輝いた。同年のインターコンチネンタルカップにも出場し、アルゼンチンのエストゥディアンテスに敗れたが、リバプールやノッティンガム・フォレストが獲得できなかったトヨタカップを、マンチェスター・ユナイテッドが1999年にブラジルのパルメイラスを倒し優勝したことは、現在のサー・アレックス・ファーガソン監督にとって自慢できる実績である。その数週間後も、ブラジルで開催された第1回のFIFAクラブ世界選手権にも出場し、今年のクラブワールドカップでも、日本までやってくる面倒を乗り越え、歴史{れきし}に重要{じゅうよう}な足跡{あしあと}を残したいだろう。

 

ディミタール・ベルバトフが移籍して以来、ユナイテッドは少しフォーメーションで悩み得点力も昨年と比べ落ちてきたが、ネマニャ・ヴィディッチとリオ・ギャヴィン・ファーディナンドを中心に守備が相変わらず粘り強く、リーグ戦で5試合続けて無失点である。ガンバとユナイテッドのスタイルは両方とも何より攻撃的と言えるが、こういったことを考えると、得点の多い試合になるとは限らない。しかし、ペースもテンションも高くなることは確かであり、ほかの準決勝を戦うLDUキトとパチューカも攻撃的なサッカーを好むので、このクラブワールドカップの残りも見事なプレーを期待できるだろう。

 

幼い頃から愛してきたマンチェスター・ユナイテッドと、第2の故郷で応援団の一員として活躍してきたガンバ大阪。私にとって、この試合は夢にも思わなかったほどの対戦であり、実感がまだまだ湧かない。ユナイテッドはビッグクラブながらヨーロッパ制覇はまだ3度であり、ガンバは僅か5年前、私が初めて万博(の当時の芝生)で生観戦したときにはアジアどころかJリーグの優勝候補でもなかった。今年はまるで、最高で偶然の一致である。

 

どちらを応援するかというジレンマは、今年の春からも悩んでいるが、結論に到達せず、チケットもクラブ枠ではなくFIFAのウェブサイトで購入したので、席はどちら側になるかもまだ分からない。複雑な気持ちでユニフォームを2枚とも着ていくしかないが、永遠に続くPK戦が有り得ない限り、やはりユナイテッドが辛うじて勝てば最も互いに満足できる結果だろう。とはいえ、個人的には完全にWIN-WINの立場にあり、私のガンバが私のユナイテッドと対戦し、私の母国の人にも知ってもらうことは、何よりの喜びである。

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明日、FIFAクラブワールドカップで、ガンバがマンチェスター・ユナイテッドと対戦することになりました。 昨年のミラン×浦和レッズに続き、夢のような対戦が見られることになったわけですが、おそらくこのカードを世界中で最も喜び、複雑に感じているのが、大阪在住のイングランド人、ベン・メイブリー。 オックスフォード大学を日本サッカーを題材とした卒論で卒業したベンくんは、その後日本に渡り、現在は日本サッカーアーカイブの翻訳をはじめ、大阪で翻訳者、通訳として活動しています。 生まれ育った町がイングランドの田舎町だ... [続きを読む]

受信: 2008年12月17日 (水) 15時47分

コメント

ベンさん、素晴らしいゲームになって良かったですね。
僕も試合後にこれほど清々しい気持ちになったのも久しぶりです。
ガンバが相手であったからマンUの凄さがストレートに現れたし、
マンUが相手であったからガンバの素晴らしさが現れたんだと想います。
まさにお互いにWIN-WINの関係であった素敵な時間でした。

ゲームはマンUの圧勝でしたが、ロナウドがFIFA.COMの単独インタビューでも応えていたように、1-5という絶望的なビハインドの状態からも心折れる事無く、ひたむきに得点を目指して、結果としてそこから2得点を挙げる技術とメンタリティを持ったガンバ大阪というチームと戦えた事をポジティブに喜んでおりました。
切って捨てるほどのチームを撃破してきたサー・ファーガソンにとってもこのアジア王者とのゲームは好感の持てるものであった筈です。
ファン・デル・サール以外の全ての人にとって歓迎できる素晴らしいゲームだったと想います。^^

投稿: プーアール | 2008年12月19日 (金) 13時26分

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