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久々のイギリスのリモコン

2008/09/30(火)

先週、しばらく国に帰ったのであるが、1週間だけでイギリスと日本の違いをいろいろと痛感させられた。当り前のことから始めると、母国ではもう外国人ではないので、短い間でも「普通の人」に戻れて良かったが、無意識に日本人になりつつあるところにも気づき、家族や友達に「今お辞儀した?!」と何回かびっくりされてしまった。時差ボケの影響で体が自動操縦になっているという言い訳で照れ隠しをしたが、本当はどんなにしんどくても、寒い気候が目覚めとなった。エアコンをつけないと寝られないほど、夜すら暑苦しい大阪の夏が終わったところだったが、ブリストル空港のターミナルビルを出ると6℃という気温には、かなりの衝撃を受けた。

 

ひょっとすると、このような寒い日々を切り抜けるために、イギリス人は日本人より豊満なお腹が備わっているかもしれない。私ももちろん、この機能を全く知らないわけではないが、帰国するたびに「1人前」という観点に驚く。タランティーノ監督のパルプ・フィクションでは、マクドナルドを指標に世界の細部が比較対照されたが、「ヘルシー」なファストフードと言われるサブウェイに寄ってみたときにも、自分のホームにした両国の相違が明らかだった。日本にも大きめのメニューもあるが、イギリスではすぐに「フットロングかね?」と聞かれる。さらに、栄養にこだわるお店として、日本では必ず「お嫌いな野菜はございませんか」を確認してもらうが、イギリスでは「サラダも入れる?」と、アプローチが微妙に違う。

 

サッカーについて内容的な対比や分析はここではしないが、とにかく、地元に最も近いプロチーム、3部のヨーヴィル・タウンのチケット情報を調べると、ゴール裏の立見席はJ1の2倍ほど、19ポンド(約3800円)の値段に尻込みし、生観戦を諦めた。比較的、下のチームに行くにもこの金額がかかるものの、赤字に陥ったクラブがしばしばあることは、イギリスサッカーの社会経済的な現状に対して憂慮すべき兆候であるが、暇な週末は久し振りにイギリスのサッカー番組を見る機会となった。イギリス国内の高級紙やあるサポーター掲示板では、サッカー報道や宣伝が大々的過ぎているという声もあり、確かに完璧なわけではないが、土日中のテレビを見ると、日本にも同じような総合的なものがあれば良いのに、という気分になった。

 

プレミアリーグの発足以来、サッカー放送権に巨額のお金を投資してきた、有力な衛星放送局のSky Sportsでは、土曜日は「Soccer AM」という、引き続き人気のワイドショーで始まる。ハイライトとコメディ、及びサッカー界や芸能界のゲストが混じり合った、楽天的な雰囲気で視聴者の目を覚ましてから、何と言ってもSky Sportsの目玉である「Soccer Saturday」の時間である。各町村のアマチュアチームまで、土曜15時キックオフという基本が長年続いており、その時間帯の生中継は禁止されているので、映像なしで試合の展開をテレビで語るというのは少し奇妙な概念かもしれないが、アナウンサたちのエネルギーやユーモアをポイントに各試合の速報を6時間にもわたり提供するこの番組は、大成功である。国営放送のBBCでも、お昼のプレビュー番組の「Football Focus」と結果速報の「Final Score」は近年の改革の中でも生き残っており、歴史が1964年まで遡る「Match of the Day」という夜のハイライト番組も依然として愛されている。生中継ももちろん、様々なディスカッション番組や24時間スポーツニュースチャネルまであるイギリスのサッカー報道は、色彩に溢れた、四六時中のものである。

 

この充実した報道の効果は何と言っても、幅広い注目を集めることにある。番組によって、分析が足りず、少し表面的なものもあるが、日本のサッカー放送は全体的に、数においても質においても遅れている。決して全員ではないが、サッカーの情熱と(さらに許し難いことに)知識にも欠けたものもあり、視聴者を感激させる想像力豊かな番組があまりない。Jリーグは確かに、イングランドのように全国の社会に深く根付いているわけではなく、視聴率が高いとは言えない状態では番組を作成する資金も入ってこない、という悪循環もあるかもしれない。しかし、材料をより創造的に使い、生中継だけではなく多様なラインアップにすると、サッカーの注目度が高まり、それこそが番組の注目度を高める、というシナジー効果も考えられる。言い方が悪いかもしれないが、「いよいよ」という単語を繰り返し言うだけでは物足りない。

 

 

*上記の「Final Score」はBBC World Newsで、日本の衛星・ケーブルテレビでも見られる。「Soccer Saturday」の中心部分(イギリス時間15時~17時)のネット中継もある。

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