有意義な実験 - スルガ銀行チャンピオンシップ
第1回大会が水曜日の夜、大阪の長居スタジアムで行われたスルガ銀行チャンピオンシップは、Jリーグが世界へ挑戦する取り組みの一環である。2003年から中国・韓国・日本のクラブが競ってきたA3チャンピオンズカップは現在、賞金未払いやスポンサー未定というような問題に囲まれ、将来性が問われているが、そういったことにとらわれず、日本サッカーのさらなる発展のために国際試合で戦える機会をどんどん作っていこう、というのはJリーグ・JFA側のビジョンである。
ACLではますます成果を出しており、FIFAクラブワールドカップももちろんアジアと開催地の代表にも出場権が与えられるようになったが、それにとどまらず、今年から南北米のトップチームと対決できる新しい大会が2つも創立された。2007年のヤマザキナビスコカップのチャンピオンとして、ガンバ大阪がその両方で日本を代表することになった。
2月のオフシーズンにハワイで行われた、パンパシフィックチャンピオンシップとは違い、スルガ銀行チャンピオンシップ2008はガンバにとってシーズンの厳しいスケジュールの途中だったので、ただの親善試合になってしまう可能性が回避された。しかし、ヤマザキナビスコカップとコパ・スダメリカーナの両チャンピオンが対決する大会として、優勝の意義が疑われ少し課題となった。ガンバはリーグでは王者ではなかったし、(南米サッカージャーナリスト、フィル・ヴィッカリー氏がBBCのコラムで指摘したように)南米のチャンピオンズリーグと言えるのはコパ・リベルタドーレスで、評判がそれほど高くないコパ・スダメリカーナの優勝者を「南米王者」と呼ぶのは少し不適切だからである。
この優勝者のアルセナルも、6月に終了したアルゼンチンのクラウスーラ(後期リーグ)では10位にしかならず、日本で知名度が高くない。しかも、長居スタジアムは確かにこのような国際試合には最適な会場ではあったが、多くのガンバサポーターの職場や住まいは北大阪というのもあり、平日の19時キックオフで何人が南部まで行くのかも不確かだった。
結局、スタジアムに集まったのは19000人ほどで、収容人数の半分にも満たなかったが、逆に、26日に万博で行われた大分トリニータ戦よりも2000人ぐらい多い人数だった。万博より音響効果が遥かに優れている会場で、雰囲気も盛り上がっていたが、サポーターも最近苦労しているリーグ戦とは異なり、よりゆっくり楽しめるような気分転換だった。
西野監督はガンバらしく攻撃していきたいとアピールしたが、堅守な相手、キーパーのマリオ・クエンカに難しい仕事をさせることがあまりできなかった。イングランドのフラムで稲本潤一のチームメートでもあった、ファクンド・サバのシュートでガンバが危なかったときはあったが、この試合は始終、少し内容に欠け、0-0で終わり勝負がPK戦で決められてもおかしくなかった。しかし、山崎雅人に代わって倉田秋という交代で中盤を強化し支配率をあげたとはいえ、セットプレーが大きな特徴と西野も認めたアルセナルは86分、コーナーキックからカルロス・カステグリオネがようやく先制点を決め、アルセナルが1-0で初代チャンピオンとなった。
私にとってこの試合で印象的だったのは、アルセナル選手の大喜びのシーンだった。やはり、国内ではタイトルを1回も獲得したことのないチームとして、去年のコパ・スダメリカーナに続いて国際舞台でまた優勝するのが大きかったというのもあり、18000キロの旅や大阪の暑苦しさを見事に乗り越えたので、ピッチを一周してガンバのファンからも大喝さいを浴びた。名門で大きなタイトルに慣れているリバー・プレートやボカ・ジュニアーズなら、観客は確かに集まるが、勝利が恐らく当たり前と感じてしまうので、アルセナルが大会を大切にしていたこの証しは、スルガ銀行チャンピオンシップの将来にとって非常にいいことかもしれない。
試合後のコメントで、力が足りなかったことを嘆いた西野監督にとっては、ストライカーの問題がまた明らかだったが、若い選手に貴重な体験をさせることに関しては満足したはずである。より広い視点で見ると、マッチプログラムでJFAの犬飼会長とJリーグの鬼武チェアマンが述べたように、こういった国際試合を通じて日本サッカーのレベルアップに繋げるのが最も大事なことである。こういった成果はもちろん、これからの様子を見る他はないが、少なくとも選手にとって学ぶことが多く、サポーターにとってもいつもとは違うサッカーが味わえるという意味で、この大会は前向きで有意義な実験だろう。
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