ボールが奪われてルーカスも倒されたように見え、大分トリニータの決勝点に議論もあったが、バレーの突然の離脱を受け、ガンバ大阪が土曜日に負けた原因は、予想外ではなかった。20日のジェフユナイテッド千葉戦に続いて、フォワードプレーが焦点に欠け、ハーフタイムの交代で徐々にリズムをあげたとはいえ、決定的なチャンスにはなかなか繋げられなかった。こういったシーンに慣れていないホームサポーターは、「西野、動け!」と監督へ不満を訴えたが、ベンチにも経験の少ない若い選手ばかりで、明白な解決法がなかった。これがゲームだったら、何度も再起動しやり直して、結果が出るまでフォーメーションや組み合わせを試してみたい、というような試合だった。
バレーとルーカスのコンビは結局わずか半年も続かず、まだ完璧にできていなかったが、最近は有望な兆しを示し始めたので、シーズンの途中というバレーの移籍は、ガンバにとって非常に残念なタイミングだった。千葉戦までの18リーグ戦では、2人とも全試合にスタメンとして出場し、合わせて16得点を挙げたが、ルーカスの6ゴールのうち、第12節の横浜Fマリノス戦からの8試合では4点も決められた。開幕のときはニューフェースだったが、同国人のパートナーの不在で、ルーカスは今からメインな役を務めざるを得ない。
ガンバとしては、今年はオフシーズンのメンバー入れ替えが比較的に多かったため、チーム作りが最初から課題となっていたが、バレーの不在をカバーするというのは、少し突発で厄介な問題である。山崎雅人は千葉戦の土壇場でチームを救ったが、プロ5年目で通算5得点という成績はメインストライカーとして監督に自信を呼び起さず、土曜日もまたベンチ入りだった。大分戦のハーフタイムに交代された平井将生も、この45分も含めて97分の出場経験しかない。ケガ、病気、五輪代表といった様々な関係で、今年のガンバは恐らく西野監督の計画よりもユース出身などの若い選手に頼ることが多く、このユース体制は確かに誇りに思うべきことだが、リーグと悲願のACL優勝に向けて挑戦している中、監督の次の布石は非常に大切である。
攻撃的で比較的に安定したチームとして、ガンバのフォワード人材の回転率が不思議と高いので、西野監督はこの移籍市場に経験が十分ある。82得点も挙げて優勝を掴んだ2005年シーズンの後、フォワード陣から4人(アラウージョ、大黒将志、吉原宏太、松波正信)もいなくなったが、マグノアウベスや播戸竜二の加入で2006年も80得点というほぼ同じ成績を記録した。フェルナンジーニョがそれから清水エスパルスに行った後も、バレーがヴァンフォーレ甲府から入り、1年目の2007年シーズンに20点を挙げ、得点ランキングの2位だった。すでに日本で活躍しているブラジル人をうまく選べることは西野の特徴であるが、今年は新しい選手の活かし方やフォーメーションでも悩んでおり、まさかの得点力不足も露呈されているので、今回も正しい選択が求められている。
アラブ首長国連邦(UAE)のアル・アハリに移籍するバレーは、マグノアウベス(現:アル・イテハド、サウジアラビア)に続いて、ガンバの選手として中近東のお金に引かれてしまった2人目である。ヨーロッパへ挑戦した大黒とブラジルに帰ったアラウージョのように、明らかにキャリアのために移籍する場合はサポーターに許されるが、Jリーグより強いとは言いがたいところに行ってしまうと、少し困惑させられる。日本のサッカーにはもちろん15年前みたいな、世界のスターを引き寄せるお金もなく、マンチェスター・ユナイテッドのクリスティアーノ・ロナウドとそのイングランド人チームメートの違った姿勢からも分かるように、自分の母国でないとチームへの忠誠心も生まれにくいかもしれない。しかし、去年バレーに対してフランス1部の2チームからオファーもあったので、さらにチャレンジできる道がなかったわけではなく、この傾向が少し残念だと思う。
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