先月、劇的なPK戦で勝ち取ったヨーロッパ制覇は、マンチェスター・ユナイテッドにとって史上3度目だった。だが、選手や監督、コーチ陣に大絶賛(そして多額の賞金)を集まる中、UEFAチャンピオンズリーグの優勝者として、年末に日本で開催されるFIFAクラブワールドカップにヨーロッパ代表として参加する特権が、現地ではほとんど無視されていた。信じられないほどの巨額な費用をかけて、選手のコンディションを守らねばならぬこの時代で、チャンピオンズリーグが最高の大会と見られ、冬休みのないプレミアーリーグで最も忙しい時期に横浜まで行く負担は少し面倒臭いとも思われている。しかし、ヨーロッパ以外の大陸では、このトヨタカップはもちろん、楽しみにするものであり、私にとっても、ヒーローを見るまたとないチャンスとなり、有り得ないと最近まで思っていたジレンマも招くかも知れない。
ノーマン・ホワイトサイドやブライアン・ロブソンを初めて見た記憶から、ずっとマンチェスター・ユナイテッドに情熱を燃やしているが、3年前に日本に来て、大好きなチームから仕方なく離れてしまうことになった。今の生活では、現地でのお昼キックオフなら土曜日の夜遊びを、若しくはここでは深夜になる平日の試合なら睡眠を犠牲にする、というような日々だが、最後にストレットフォード・エンドにいたのは2004/05のチャンピオンズリーグで、リヨンとの試合だった。
ところが、日本に来て以来、この恋しさを少し異なったサッカー経験でだいぶ忘れてきた。留学生の時代、Jリーグ、またガンバ大阪とその熱狂的な応援団に触れ、今は100ポンドもしない年間チケットを比較的に近いスタジアムへ持っていき、すごく面白い人たちと観戦することができる。ホームだったら仲間ばかりというのはもうもちろんのことだが、行きも帰りも徹夜しながら交代で運転するしんどいアウェイゲームも時々行っている。カップ決勝戦やリーグ優勝決定戦を見て、クルヴァの友達と一緒に悔し涙も嬉し涙も流してきた自分は、外国人でありながらもグループの一員になっていると思う。しかし、私の忠誠は最近、初めて疑われてきてしまった。
「ほんならベン、もしガンバもトヨタカップに出てユナイテッドと試合するとさあ、お前どっち応援するん?」
最近まで、私は絶対大丈夫だと思っていた。確かに恋人が2人もできてしまったが、あまりにも物理的な距離があったため、この重婚は絶対バレないと思っていた。もちろん、ずっとチャンピオンズリーグを優勝して欲しいと思い、(選手たち自身が望まないとしても)ちゃんとした大会でずっと日本に来て欲しかったし、今年まで保障されていた日本の開催地の権利がなくなってしまったので、今年出場しなかったら暫くできないかも知れない。クリスティアーノ・ロナウドの成績がまだ出ていないときから一回も見ておらず、「ビバ・ロナウド」やその他の新応援歌は深夜にテレビの前で歌ってもやっぱり同じような納得はできない。目の前でユナイテッドの得点を見るという喜びを、長い間待ってきて、そのチャンスはついにこの12月に来るはずだ。しかし、もし反対側のゴール裏には、私の数十人の友達、毎週一緒に応援する友達がいるのだったら、この得点に本当に喜べるのか?
もちろん、ユナイテッドにとっては、この試合はたぶん南米チャンピオンとの決勝戦に向けてスタメンを何人かベンチに下げて休ませる、ただのウオーミングアップになるかもしれない。逆にガンバにとっては、史上最大の試合と言って間違いない。優勝すればトヨタカップの出場権も獲得するようになってこの4年間、アジアチャンピオンズリーグは以前より注目されてきて、ACミランと対戦するチャンスが確かに去年の浦和レッズにとって大きな刺激となっただろう。初めて応援したときにはガンバの歴史がまだ浅かったが、この数年を通してかなりの成功を達成したとは言え、ヨーロッパのチャンピオンを破れば将来にも2度とない成功と言っても良いだろう。今年はガンバにとってまだ史上2度目のACL参加だが、グループリーグ突破が1試合早く決まった上に、開催地として1つのJリーグクラブに出場権が保障されていることから、このサポーターの夢が必ずしも叶わないわけではない。
単にサッカー的には、こういった試合はガンバにとってWIN-WINになるはずだ。勝つとは思わないので、結果にとらわれず楽しんで盛り上がる。もし私が青と黒を着て、弱者を応援することにしたら、この世紀の一戦を誰よりもガンバを愛する友達と一緒に経験することができる。逆に、反対側のスタンドで赤いユニフォームを着ることにしたら、もうレギュラーじゃないので仲間もいなく、結果も当然の勝ちしかないか恥ずかしい負けになるし、ガンバの仲間たちをムカつかせてしまうリスクもある。これはもちろんまだ仮想のことではあるが、決して素晴らしい夢だけではなくて、実現する可能性は低くても確かにあるので、半年前というところにも既にかなり悩んでいることだ。
しかし、振り返ればマンチェスター・ユナイテッドはやっぱり私の初恋だったね。私の心にはたぶん、ガンバの掴んだ予想外の勝利より、ユナイテッドの地味な勝利のほうが良いかな、という気がします。ガンバの仲間へは、この裏切りは本当に申し訳ないけど、もしまだ良かったら、勝っても負けても一緒に打ち上げしよう…
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