『奇跡のイレブン』のダニエル・ゴードン監督が北朝鮮サッカーを語る

2010/07/29(木)

2010ワールドカップ準決勝第一試合の前日・7月5日、ヨハネスブルグのインディペンデント映画館「The Bioscope」で『奇蹟のイレブン』を観賞させて頂き、同作品のダニエル・ゴードン監督とお話する機会を得た。既にFootball Japan Minutecastでもご紹介しているように、ゴードン監督には北朝鮮サッカー、映画で追った1966W杯の代表メンバーとそのアジアに対する気持ち、そして同監督の新作(テーマが今年のW杯決勝戦の一日)について語って頂いた。

 

 

『奇跡のイレブン』には、朴斗翼(パク・ドゥイク)選手とそのチームメイトが金日成の像の前に立ち、1966年にいわゆる「偉大なる領導者」から頂いた言葉を思い出すシーンがあります。「アフリカ・アジア地域の代表として、1、2勝を挙げてきてくれ。」 この映画の撮影時、選手達から他に日本や韓国、中国など、アジアについて何かお話を聞いたこともありますか?

 

彼らは実際に行ったりした経験があまりないので、異国のことは概念的に話すくらいです。代表戦で何回かマレーシアやタイに行った選手がおり、インドでも試合をしたそうです。そして、キューバでプレーした選手ももちろんいました。しかし、外の世界に関する知識が非常に乏しいです。『ヒョンスンの放課後』という、北朝鮮のマスゲームに参加した2人の少女を負った作品も撮りましたが、あの女の子にアメリカについて聞いてみました。その答えは、「アメリカって何?」と。アメリカはただの概念のようで、地図上のどこにあるか分かっていません。机の上に地球儀が置いてありましたが、綺麗な飾り物だから市場で買ったそうです。

 

日本生まれの在日北朝鮮人の場合でも、日本にある朝鮮学校で育ち、偉大なる領導者の偉業について勉強しますね。我が社は北朝鮮で合わせて3つの映画作品を撮り、その販売権を日本の映画会社にもかなり高い金額で売ることができましたが、第3作の『クロッシング・ザ・ライン』が日本ではまだ一切公開していません。何故なら、内容が日本にしては際ど過ぎるからだと言います。この映画会社が『奇跡のイレブン』を公開したときには、同社の映画館をボイコットするぞというクレームが殺到しました。『ヒョンスンの放課後』も同じような騒ぎになったらまずいので、日本のテレビ局に公開権(とクレームの負担!)を転売することになりました。因みに、この映画会社の社長は自らが在日北朝鮮人なので、身近な問題でもありました。何かネガティブなことがあれば、会社の営業に影響が大変だったからです。

 

第3作の『クロッシング・ザ・ライン』は、1960年代に4人のアメリカ人が米軍から脱走して北朝鮮に亡命し、「米国の悪者」役でプロパガンダ映画にも主演した話のドキュメンタリーですが、これを在日北朝鮮人の社長に見せたとき、「このプロパガンダ映画大好き!子供のときに何回も見たからすごく懐かしい!」と笑いました。本当はすごく演技過剰で、とんでもないプロパガンダですが、社長はやはり場所が日本とは言え、朝鮮学校に通うと、そのような環境で育つわけだと言いました。個人的に、私は北朝鮮に巡礼する在日北朝鮮人たちを観察したこともありますが、彼らはもちろん一般の北朝鮮人とは見た目が全く違うと言いながら、一方で日本では、一般の日本人とは違うとも感じるでしょうね。

 

今年の北朝鮮代表のW杯メンバーの中にも、お馴染みの鄭大世安英学という、日本生まれ日本育ちの在日北朝鮮人が2人いました。鄭大世は特に、朝鮮学校で育ち、北朝鮮に対して愛国心が強いようですが、それと同時に日本の音楽を普通に聞いたり、ハマーを運転したり、日本のテレビ番組に出て(当時所属の川崎フロンターレ)チームメイトと笑ったりします。欧米人にとって、興味深い選手でしょうね。

 

そうですね。今は鄭大世と言えば、W杯の国歌に号泣した北朝鮮代表選手として世界中に知られています。彼もやはり日本生まれ日本育ちとは言え、完全に北朝鮮のシステムで育ったのですね。

 

あるとき、「北朝鮮に住む機会があれば、実際に行くのか?」と友人に聞かれましたが、鄭大世は「う~んと…」と声が小さくなったそうです。日本では豊かな生活ができているので、難しい葛藤でしょうね。

 

私は北京駐在の北朝鮮外交官の知り合いがいますが、彼らもやはり同じ気持ちです。もちろん、サッカー選手のようにお金持ちではなく、真に自由とは言えないでしょうが、とにかく平壌と比べては自由な生活ができるからです。しかし、彼らにとっても、イギリスにお越しになって案内をさせて頂いた1966年のW杯代表メンバーにとっても、北朝鮮がやはりホームだ、という気持ちもまだ強いです。私は以前、脱北者の知り合いに平壌の写真を見せてみたことがあります。北朝鮮の政府やシステムがあまりにも嫌で脱出までした彼ですが、平壌の写真を見たり、私も馴染みの店や道のことを話したりすると、涙が出ました。今でも平壌が故郷という気持ちが相変わらず強く、感動するのです。

 

さて、今回南アフリカで撮影中の作品ですが、内容は決勝戦の日のみでしょうか?

 

その通りです。当日の準備なども撮影しますが、準決勝やそれまでの試合映像を使うつもりはありません。チームの他、スタジアムの準備などもポイントなので、地元の面白い関係者にインタビューしたりもしたいと思います。実は今日、スタジアム建設の成功の見返りに決勝戦チケットをもらった、建設作業員をやっと見つけ出したところです。

 

W杯決勝戦の1日に焦点を合わせる、舞台裏のドキュメンタリーなのですが、やはり準決勝が終わるまで出場チームが決まらないため、選手やコーチ陣にどこまでご協力を頂けるかはまだ分かりません。しかし、FIFAの大物には既にインタビューのお願いをしておきましたから、決勝戦が彼らにとって何を意味するのかについて話して頂くことになっています。そして、デズモンド・ツツ大主教とのインタビューもほぼ決定的ですし、それをはじめとして、南アフリカやアフリカ全体を代表する人物をできるだけ1日追ってみたいと思います。さらに、ネルソン・マンデラ元大統領についても何とかなる可能性はありますが、それも正直、2分前にならないと分からないでしょう。とにかく、小さなアイデアがたくさんあります。審判陣の決勝戦のストーリーも語れるように、そのご協力を頂くことになっています。

 

ゼップ・ブラッター会長のストーリーは?

 

頑張っています!

 

 

* このインタビューを行った数日後、鄭大世は川崎フロンターレからブンデスリーガ2部のVfLボーフムに移籍し、Jリーグを去ることが明らかになった。

 

このインタビューの機会を用意して頂いた、「The Bioscope」映画館のダリル・エルス氏とラッセル・グラント氏に感謝の意を表したいと思います。誠にありがとうございました。これからのご活躍をお祈りしております。

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南アフリカ人と「アフリカ」のアイデンティティー

2010/07/22(木)

今月、ヨハネスブルグで南アフリカサッカーの現況を調べている、英・エジンバラ大学の博士研究者、マーク・フレッチャー氏にインタビューを行った。W杯の影響によって南アフリカがどのように変わってきたか、そして地元の人々が準々決勝(対ウルグアイ)でガーナを応援していた理由をフレッチャー氏に教えて頂いた。(このインタビューの音声はFootball Japan Minutecastにてお聴き頂けます。

 

 

昨年にもおしましたが、そのときは治安やスタジアムの準備などについて、南アフリカに対する欧米日のステレオタイプが大きなネタでした。しかし、毎日のように載っていた批判的な記事が今となって、新聞から姿を消しているようです。

 

そうですね、殆どなくなっていますね。あのときはとにかく、イギリスの報道は何より勉強不足だったと思います。記者が一度も南アフリカに来ずに、勝手に変なことを書いていたケースも多かったようです。しかし、今年は本大会ということで実際に南アフリカに来てもらい、特にサッカー・シティのような驚くべき、世界で通用する施設を目の当たりにすることができました。そして、広く懸念されていた犯罪の多発や、例えば英国紙のデイリー・スターが大げさに予測していた「大量殺人」もやはり実現していませんね。あのような記事は完全に現実から乖離していました。もちろん、W杯が開幕してから犯罪事件が1件も起きていないわけでもありませんが、それは決してヨハネスブルク特有の問題ではなく、むしろ開催地がどこであっても同じでしょう。ロンドンであれ東京であれ、多少の犯罪は当然あるからです。

 

フレッチャー氏は1年ほどイギリスに帰国し、そしてW杯の前にヨハネスブルクに戻ったのですが、街のどんなところが変わったのでしょうか?

 

まずは、主要な観光スポットが新しく塗装し直され、綺麗になりました!しかし、皮肉はさておき、インフラの面でも大きな変化がもちろんありました。中でも道路工事が終わり、スタジアムも全て完成しています。そして、街の報告看板なども非常にカラフルになって、W杯開催を喜んでいる感じが強いです。さらに、これはヨハネスブルクという街自体に止まらず、人々も変わったと思います。今までにこれほど多くの人が南アフリカ代表、バファナバファナのユニフォームを着ているのを見たことはありません。どこに行っても国旗が飾られています。昨年のコンフェデレーションズカップのときにはこのようなシーンを殆ど見かけませんでした。

 

研究の一環として、W杯のパブリックビューイングやスタジアムで地元のサポーターと色々と話しているそうですが、この大会は南アフリカ人にとってどうだったでしょうか?バファナバファナのグループリーグ敗退によって何か影響はありましたか?

 

バファナバファナの敗退はブブゼラの勢いに影響があったかもしれませんね。W杯直前、特に開幕日の朝には、早朝5時からブブゼラを吹いていた人もいました。本当に止まらなかったのです。今は何も聞こえませんが、敗退前はこのオフィスでも外のブブゼラの音が響いていました。しかし、バファナバファナの結果にもかかわらず、一般の南アフリカ人はW杯開催の体験をものすごく楽しめていると思います。試合の観客席の過半数が南アフリカ人ですし。私が生観戦したパラグアイ対日本の試合には、実際にパラグアイと日本からお越しのサポーターが少なかったですが、その代わりに地元の人たちが両国の国旗を掲げたり、応援服を着たり、思い切って盛り上がっていました。このW杯というパーティーが終わってしまい、皆が逆に意気消沈すればどうなるでしょうかね。

 

最後に、ベスト8では地元の南アフリカ人が最後のアフリカ代表として、満場一致で必ずガーナを応援していたようでしたね。

 

大まかに言えばそうでしたね。アフリカのサッカーはやはり、結構ユニークです。例えば、エジプトがデンマークと対戦することになれば、アンゴラのサッカーファンも大陸の反対側とはいえ、同じアフリカということでほぼ必ずエジプトを応援します。これは欧州やアジア、北米などではなかなか想像できないことですね。世界の他の地域とは違い、アフリカには不思議で独特な地域アイデンティティーが強く存在するからです。イングランド人は同じヨーロッパだからといって、必ずイタリアをアルゼンチンより応援するわけではありません。この「アフリカ」というアイデンティティーが何故生まれるかはまだはっきり分かりませんが、私の意見では、植民地時代や宗主国との闘いの名残、或いは結果だと思います。アフリカの各国が独立を果たしてから、それぞれの国民性とともにアフリカのアイデンティティーもサッカーを通じて強めようとしたのです。

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Minutecast:南アフリカ・ヨハネスブルグの特別シリーズ④ カイザー・チーフスのファンクラブ地域会長、ナイロン・ンファヒレレ氏にインタビュー

2010/07/13(火)

この度、2010ワールドカップの開催地、南アフリカ・ヨハネスブルグでFootball Japan Minutecastの特別シリーズを作成することになりました。

 

本日の4回目では、カイザー・チーフスのファンクラブのグレーター・ヨハネスブルク地域会長、ナイロン・ンファヒレレ氏にインタビューを行いました。ンファヒレレ氏は母国でワールドカップを観た体験、海外からやってきたサポーターに売ろうとした南アフリカ料理、そしてワールドカップによって同国のプレミアサッカーリーグがどう変わっていくかについて話して下さいました。

是非お聴き下さい!

 

番組はこちら:http://minutecast.footballjapan.jp/article/156180887.html

iTunesにてご購読頂けます。

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Minutecast:南アフリカ・ヨハネスブルグの特別シリーズ③ 『奇蹟のイレブン』のダニエル・ゴードン監督が北朝鮮サッカーを語る

2010/07/12(月)

この度、2010ワールドカップの開催地、南アフリカ・ヨハネスブルグでFootball Japan Minutecastの特別シリーズを作成することになりました。

 

本日の3回目では、ヨハネスブルグのインディペンデント映画館、「The Bioscope」で『奇蹟のイレブン』を観賞させて頂いた後、ダニエル・ゴードン監督が北朝鮮サッカー、選手のアジアに対する気持ち、そして同監督の新作(テーマが昨日の2010ワールドカップ決勝戦)などについて語って頂きました。

是非お聴き下さい!

 

番組はこちら:http://minutecast.footballjapan.jp/article/156158030.html

iTunesにてご購読頂けます。

 

この番組をベースに、7月下旬~8月上旬にこのページにて記事も公開する予定です。(英語版もあります。

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Minutecast:南アフリカ・ヨハネスブルグの特別シリーズ② ウルグアイ×ガーナ(準々決勝、サッカー・シティ)

2010/07/03(土)

この度、2010ワールドカップの開催地、南アフリカ・ヨハネスブルグでFootball Japan Minutecastの特別シリーズを作成することになりました。

 

本日の2回目では、昨日のW杯ベスト8、ウルグアイ対ガーナで収録したコメントを紹介します。観客の9割ぐらいがアフリカ代表のガーナを応援していた中、FWアサモア・ギャンが延長戦ロスタイムの最後の最後に何とPKを外し、ウルグアイが結局PK戦で勝利を収めました。

是非お聴き下さい!

 

番組はこちら:http://minutecast.footballjapan.jp/article/155517192.html

iTunesにてご購読頂けます。

 

この番組をベースに、7月下旬~8月上旬にこのページにて記事も公開する予定です。(英語版もあります。

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Minutecast:南アフリカ・ヨハネスブルグの特別シリーズ① 南アフリカ人と「アフリカ」のアイデンティティ

2010/07/02(金)

この度、2010ワールドカップの開催地、南アフリカ・ヨハネスブルグでFootball Japan Minutecastの特別シリーズを作成することになりました。

 

本日の1回目では、ヨハネスブルグで南アフリカサッカーの現況を調べている、英・エジンバラ大学の博士研究者、マーク・フレッチャー氏にインタビューを行いました。フレッチャー氏はW杯の影響によって南アフリカがどのように変わってきたか、そして現地の人々が本日の準々決勝(対ウルグアイ)でガーナを応援する理由を教えて下さいました。

是非お聴き下さい!

 

番組はこちら:http://minutecast.footballjapan.jp/article/155237437.html

iTunesにてご購読頂けます。

 

この番組をベースに、7月下旬~8月上旬にこのページにて記事も公開する予定です。(英語版もあります。

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Minutecast 特別番組と英・ガーディアン紙

2010/06/14(月)

本日のFootball Japan Minutecastは特別番組として、今夜11時にキックオフする日本×カメルーン戦をプレビューします。

 

World Cup Special - Japan vs. Cameroon preview

(iTunes購読

 

また、英国・ガーディアン紙に賀川浩氏の言葉なども含む、日本代表の課題を紹介する記事を載せて頂きました。同紙のホームページでもご覧頂けます。

 

http://www.guardian.co.uk/football/2010/jun/13/world-cup-fans-network-japan

 

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【キックオフまで後1日】 FOOTBALL JAPANメンバーのW杯予想 (下:全体)

2010/06/10(木)

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会はいよいよ明日、11日の夜に開幕戦を迎えます。

Football Japan Minutecastにて、W杯期間中は日本戦のプレビュー・レポートをはじめ、決勝トーナメントからは現地ヨハネスブルグから特別番組なども、週数回配信する予定ですので、お楽しみにして下さい。

 

しかし、その前に、W杯に向けてFootball Japanメンバーの予想はどうでしょうか?私はシックス本多克己社長と、日本の現役最年長のスポーツライター・賀川浩氏と、ライター兼賀川氏のアシスタント・根本いづみ氏と4人でお話しました。

 

(「上:日本代表」はこちら)

 

 

 さて、話題を日本代表から全体に変わりましょう。2010年のW杯はどこが優勝すると思いますか?

 

賀川: スペインは評判が良いようですが、スペインが今までW杯で良いのを見たことがないですからね!今のスペインは確かに力ありますから、前も揃っているし、後ろもジェラール・ピケも皆も良くてしっかりしているから、決して優勝しても不思議ではない。それにスペインみたいなチームに対して一番嫌な感じで抵抗できる、イタリアはここのところちょっと落ちているから、この際勝って欲しいです。ブラジルもやはりスペインと並んで優勝候補に挙げるのは当然でしょう。イングランドも一遍勝って、決勝までは出て欲しいと思いますけど!

 

本多: イングランド。出場した英語圏での開催ではすべて優勝しているからです。

 

根本: スペイン。堅固なディフェンスに、充実の中盤、そして強力な2トップ。死角がないですね。

 

メイブリー: イングランド!いや、冗談です。イングランドと日本が無理だったら、やはり美しいサッカーを見せてくれるスペインに優勝して欲しいですが、グループリーグを突破した後は難しい相手ばかりです。もう少し実際的なアプローチをする、ドゥンガ監督がブラジルに優勝をもたらすのではないかと思います。

 

 他に注目したいチームはどこですか?

 

賀川: ポルトガルがね、前は何と言ってもクリスチアーノ・ロナウドですし、マンチェスター・ユナイテッドナニも良い選手ですから、彼らがどれぐらい働くかで、まるで違ってきます。ポルトガルは前のルイス・フィーゴの時代でも、いつも世界からいじめられているような感じでやって、すぐ拗ねちゃうから、それさえなければ、サッカーとしては一人ひとりの芯が強いプレーが出てくると、面白いんだろうと思います。

 

本多: 韓国は隣国として応援したいです。そして、スペイン、欧州王者があの美しいサッカーでどこまでいけるかですね。後は、アメリカも良いグループに入ったし、昨年のコンフェデレーションズカップでも結果を残したので、かなり良い線いきそうです。

 

根本: デンマーク、それからやっぱりブラジルは気になりますね。デンマークは、全体的に顔が好みなんです。平均点の高さというのか、イチオシはスウェーデンなのですが、残念ながら今回は出てこないので……次点のデンマークに期待しています。

 

メイブリー: アルゼンチンと例のディエゴ・マラドーナ監督。6月の終わりぐらいにブチっとキレて、カルロス・ビラルドの戦術アドバイスを無視して、準々決勝にフォワードを(マルティン・パレルモまで含めて)6人とも同時に起用することを期待しています。後は、オランダ、デンマーク、それから北朝鮮。欧州人として、日本や韓国の人々は「千里馬」の活躍をどんな目で見るかが注目です。

 

 得点王は?

 

賀川: イングランドが上がってくるためには、やっぱりルーニーがやらなあかんでしょう。クリスチアーノ・ロナウドも暴れてくれれば、ポルトガルは面白いです。それから、上まで来なくても、ディディエ・ドログバ。どこかを相手に1試合で4点取ったら一気に得点王になることもありますからね。

 

本多: ウェイン・ルーニー、またはロビン・ファンペルシー

 

根本: ダビド・ビジャ、またはルイス・ファビアーノ

 

メイブリー: ビジャがグループリーグでかなり点を取れると思いますし、それだけでも十分かもしれません。

 

 他に注目したい選手もいますか?

 

賀川: サッカーとしては、世界中の評論家は皆スペインに行くでしょうけれども、アフリカンパワーの個人的な強さがどこかで発揮できるチームが出てくれば面白いです。そういう意味でやっぱりドログバですね。サミュエル・エトオはちょっとまとまり過ぎていると思います。後は、韓国は日本とやるときぐらいはいつも一生懸命になるんですけど、どことやってもあのつもりでやってくれれば良いのにですね。

 

本多: 本田圭佑大久保嘉人森本貴幸。日本が躍進できるとすれば、この3人の活躍しかありません。大久保は挑発に乗ってカードをもらわないこと!

 

根本: 森本、楢崎正剛川島永嗣。日本の躍進には、彼らの活躍が絶対必要だと思います。後は、ファン・セバスチャン・ベロン。今大会で最もセクシーなフットボーラーです。個人的に、ですが(笑)。

 

メイブリー: 本田は日本のキーマンとして、ここ2年の急成長をW杯の舞台でも続けられるようにチャンスと自由を十分与えて欲しいです。また、北朝鮮に戻りますが、やはり鄭大世。「死の組」にもかかわらず、本人はJリーグで見せる得点力をW杯でも発揮し、1試合ごとに必ず1ゴールを決めると言っているそうです。

 

 どのチーム、或いは選手が期待外れに終わるでしょうか?

 

賀川: まず、南アフリカは皆、地元のチームを押し上げるから、期待外れにはならないと思います。しかし、記者はリオネル・メッシがいるからアルゼンチンを高く買いたいわけで、僕もアルゼンチンのサッカーが好きですけれども、バルセロナは良いチーム過ぎるから、メッシのボールを受ける感覚が非常に贅沢になりますよね。アルゼンチンの周りは、ちょっと荒削りの仲間とやるときに、どんな具合になるかなと思います。もちろん、世界一の選手ですから、上に上がってきたら面白いと思いますけど、監督さんはあのマラドーナ監督さんですよね。大天才が監督で、大天才がチームの中心というのは、非常に難しいところがありますが、色んな意味で面白いですね。

 

本多: クリスチアーノ・ロナウド。

 

メイブリー: 賀川さんの仰る通り、メッシやロナウド、ルーニーといった選手はいずれもあまりに素晴らしいクラブでプレーしていますが、それぞれの代表チームでは多少苦労してもおかしくないですね。チームとしては、開催地の南アフリカは何とかなると思いますが、同じグループAのフランスには何も期待できません。

 

 最後に、2010年の南アフリカ大会に向けて、一番お楽しみにしていることを教えて下さい。

 

賀川: サッカーそのものは、どんどん進歩したり、個人的にも運動量も増えて、ものすごく忙しいサッカーになりました。それで面白くないという人も多いけれども、このような中から今のバルセロナみたいなチームという一つの形ができました。それに習うように、それぞれの個性を持った選手のある国々がやはり、運動量を増やして、従来よりもサッカーをもっと面白くしようという感じで上がってきたというのは確かです。

そういう意味ではね、アフリカというのは、今の学説では人類の発祥の地、そしていわゆる二足歩行を始めた土地ですね。それで二足歩行じゃないとできないサッカーなんですよね。そのサッカーが初めて、アフリカという土地でやるというところに、僕はサッカーの歴史の上でものすごく大きい時期が来ていると思います。それでやっぱり、サッカーがもう一段上になってきたというのは、次どんなふうにこの大会で見せるか、国別という形でどれだけ新しい組織プレーを表せるか。従来よりも一歩進んだもんになって欲しいなと思います。その中に、発祥の地であったアフリカ人に割り込んできて欲しいです。

 

本多: 上記の本田、大久保、森本の活躍。

 

根本: まずは、大会の成功です。それからマラドーナ監督の言動と、ブラジル・スタンドの美女も楽しみ…(笑)

 

メイブリー: 個人的には、今年はライターとして2度目のW杯ですが、現地で取材するのは初めてです。賀川さんのように、いつもとは違う国や地域でW杯などを開催する(もちろん、再来年のユーロもポーランドとウクライナ、2014年W杯もブラジルで行われる)のはすごく価値のあることだと思います。ですから、南アフリカ風にサッカーの大祭りを体験するのを本当に楽しみにしています。いつも治安など、アフリカのことを悪く言う人がようやく黙ってくれるように、大会の成功を祈っています。

 

 

(「上:日本代表」はこちら)

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【キックオフまで後2日】 FOOTBALL JAPANメンバーのW杯予想 (上:日本代表)

2010/06/09(水)

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会は今週の金曜日、11日に開幕戦を迎えます。

Football Japan Minutecastにて、W杯期間中は日本戦のプレビュー・レポートをはじめ、決勝トーナメントからは現地ヨハネスブルグから特別番組なども、週数回配信する予定ですので、お楽しみにして下さい。

 

しかし、その前に、W杯に向けてFootball Japanメンバーの予想はどうでしょうか?私は日本の現役最年長のスポーツライター・賀川浩氏と、シック本多克己社長、ライター兼賀川氏のアシスタント・根本いづみ氏と4人でお話しました。

 

(「下:全体」はこちら)

 

 

 日本代表の初戦、カメルーン戦はいよいよ14日(日)に行われます。岡田ジャパンの調子はどうでしょうか?

 

賀川: ああ、ずっと悪いですよね。一番の心配は、去年の予選を突破してから、全然伸びていないこと。そして、伸びていないだけでなくて、むしろ、前と前のシーズンの疲れが重なって、遠藤保仁が調子が悪い。それから中村俊輔も、日本の食品で言えば賞味期限切れという感じに近づいている。元々はそういう年齢でもあるし、そういう体力でもあるけれども、それが今、非常に目立っていますよね。すごい怪我が来ているから。最もパスのうまい2人が揃ってダメというのはね、大変ですよね。

 

本多: 好調とは言えないかもしれないけども、ぼちぼちですね。

 

根本: 俊輔の調子が心配ですね。中澤佑二は、セルビア戦に比べるとずいぶん良くなってきた感じで一安心ですが。

 

メイブリー: アジア予選で出場権を獲得したのは1年前になりますが、それ以来は、2部から昇格を決めたら「攻撃的なスタイルは変わらない」と主張するクラブチームに似ています。やはり、トップレベルはそう甘くないですね。岡田監督はようやく戦術を変更し始めていますが、それでも、戦術が分からないマスコミは何故か変えないようにプレッシャーをかけているようです。

 

 カメルーン戦に続き、グループEでオランダデンマークとも対戦します。突破の鍵となるのは何でしょうか?

 

賀川: カメルーン戦ではまず最低、勝つことが条件ですけれども、そうでなければ負けないことです。それは一番ですね。そのためには、カメルーンとアフリカのチームは平均して、非常に皆が個人的に優れているけれども、守りのときに時々どの優秀なチームでも気が抜けるときがありますからね。そういうところにこちらの連動性がうまく行き合えばね…

イングランド戦の前半の得点でも、日本は本当に良いリズムでコーナーキックを得ましたね。そして、遠藤が非常に賢いプレーで引っ張って入れたけれども、キックの前に阿部勇樹がニアへ走ったので、田中マルクス闘莉王が付いていきました。闘莉王は非常に攻撃のセンスがありますから、シュートの前の動きも非常にうまいですね。それで入りました。

日本はコーナーキックも含めて、あの一連、ものすごくリズミカルに行っていますよね。ちょうどそのときに、イングランドがちょっとぼんぼんやりしていたのですね。サッカーの試合にそういうことがあるので、もしカメルーンのときにも出れば、うまくいけば2対1、1対0で勝てるかも分かりません。悪くても引き分けてくれれば、次に臨みがありますよね。

 

本多: カメルーン戦は重要ですが、その結果にとらわれずに自信を持って試合に臨むことです。負けても過度に落ち込む必要はありません。

 

根本: 私も同感ですね。初戦はもちろん大事。でも、万一、落としたとしても2006のときのように「もうダメだ」と思わないこと(メディアも含めて)。後は、GKの活躍。

 

メイブリー: 相手の3チームはいずれも体の強い選手がたくさん揃っていることから、日本にとっては決して理想的な組み合わせではありませんが、私は最初から、中盤の争いが鍵を握ると思っています。ですから、岡田監督は自信を持って、レベルの高い相手に対してはボールをキープできない4-2-3-1をやめ、阿部(または稲本潤一)を投入して4-1-2-2-1を起用しなければならないと思います。後は、本田圭佑をどう活かせば良いか、ということですね。

 

 岡田監督はもちろん、「ベスト4」という目標を掲げていますが、これは本当に現実的ですか?NOの場合は、現実的な目標は何でしょうか?

 

賀川: 普通に考えれば、日本より強いというほど見せつけた韓国だって、優勝が200対1ぐらいの賭け率ですね。それは正確なところですしね。だけども、サッカーで力が開いていても、場合によって勝てるチャンスもありますから。ベスト4というのは、普通の常識で聞けば「何を言っとるんだ?!」と思う人が多いでしょうが、監督としては、初めから負けにいくという監督はいないわけです。だから、ベスト4というのは別に妥当なもんですよね。

ベスト4を抜けて、優勝するかせんかということになると、国全体のサッカーの厚みがかなりものをいうと思います。ですけど、短期決戦では、2002年の韓国と1968年オリンピックの日本代表などもベスト4まで行きましたね。高めの望みには見えますし、日本がプレミアリーグに入ったらもちろん有り得ないですが、これはやはりスポーツの面白味ですね。日本人は日本のことを悪く言いたいですけど…

 

本多: 1勝とか、グループリーグというのはすでに達成しているのですから、目標としてはおかしくないと思うので、ベスト4で良いです。2002にグループリーグ突破という目標を果たした後の無残なトルコ戦のことは忘れられません。

 

根本: 実現の可能性ゼロとは言えないけど… 現実的なところと言えば、やっぱりグループリーグ突破かな?

 

メイブリー: 元々、誰が悪いかはあまり良く分かりませんが、この「ベスト4目標」というのは今やあまりにも大げさなことになってしまった結果、選手達に過大の負担を与えているに違いありません。プライベートでは、高い目標を設定するのは私も賛成ですが、公の話になると、マスコミやサポーターが期待し過ぎずに応援し続けてくれるように、もう少し慎重に話せば良かったです。現実的には、グループリーグを突破できれば、それだけで大成功のではないかと思います。

 

 理想や目標をひとまず置いておいて、日本代表は結局どこまで進むと思いますか?

 

賀川: 一次リーグを突破すれば、それも万歳です。全力を尽くさんと勝てないし、引き分けできないからですね。実際は、今の中村俊輔と遠藤の調子が治らなければ、それはちょっと…

 

本多: 客観的に見れば、ということならグループリーグ敗退でしょうね。ただ、どのチームも日本には必ず勝たなければいけないと考えているはずなので、その意識がチャンスではあります。

 

根本: ベスト16!希望は捨てられません!

 

メイブリー: 決勝トーナメントまで進むには、日本はカメルーン戦とデンマーク戦から勝ち点4を取り、そしてある程度の運も必要になってくるでしょう。3敗など、大失敗には終わらないと思いますが、戦術の変更が少し出遅れたこともあり、突破は厳しいかもしれませんね。

 

 

(「下:全体」はこちら)

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英・ガーディアン紙、オブサーバー紙のW杯特集

2010/06/06(日)

本日、英・ガーディアン紙の日曜版、オブサーバー紙のW杯特集に日本代表の記事を載せて頂きました。同紙のホームページでもご覧頂けます。

 

http://www.guardian.co.uk/football/2010/jun/06/japan-world-cup-2010-fans-preview

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